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 昭和39年版 犯罪白書 第三編/第四章/一 

一 保護観察の概況

 保護観察の対象となる者は,次の五種類である。
(1) 家庭裁判所の決定により,保護観察に付された者(以下「保護観察処分少年」という)
(2) 地方委員会の決定により,少年院からの仮退院を許された者(以下「少年院仮退院者」という)
(3) 地方委員会の決定により,仮出獄を許された者(以下「仮出獄者」という)
(4) 刑事裁判所の判決によって,刑の執行を猶予され保護観察に付された者(以下「保護観察付執行猶予者」という)
(5) 地方委員会の決定により,婦人補導院からの仮退院を許された者(以下「婦人補導院仮退院者」という)
 これらの保護観察対象者は,各地方裁判所所在地に設置されている四九の保護観察所の保護観察をうけるこ」とになっているが,最近五年間に,あらたに保護観察に付された対象者について考察すると,次の三つの特色がみられる。すなわち
 第一は,III-78表に示すとおり,対象者の数が昭和三五年を頂点として急激に減少していることである。そのおもな理由は,仮出獄者,保護観察処分少年および少年院仮退院者の減少によるものであるが,保護観察付執行猶予者は必ずしも滅少していない。仮出獄者と少年院仮退院者の減少は,刑務所,少年院の収容者自体が減少してきていることが大きく影響しているものと思われる。

III-78表 保護観察対象者の種類別新受人員(昭和33〜37年)

 第二は,暴力犯罪者が累年増加していることである。すなわち,保護観察対象者を罪種別にみると,III-79表に示すように,刑法犯では強盗,殺人,傷害,傷害致死,脅迫,強かん,わいせつ,また特別法犯では暴力行為等処罰ニ関スル法律違反,銃砲刀剣類等所持取締法違反など,暴力犯罪の全対象者中に占める割合が累年増加の傾向にあり,窃盗,詐欺,横領,賍物などの財産犯のそれは減少している。

III-79表 罪名別保護観察新受状況(昭和33〜37年)

 第三は,大都市を管轄する保護観察所の保護観察人員が増加していることである。すなわちIII-80表は,東京,大阪,横浜の各保護観察所の新受人員の占める割合が,累年おおむね増加していることを示しているが,さらにIII-3図は,東京,大阪,横浜,神戸,名古屋の各保護観察所における,保護観察対象者の移動に伴う増加を示すもので,この二つの図表からも,大都市における保護観察人員の増加,いわゆる都市集中化の現象がうかがわれる。

III-80表 主要保護観察所の保護観察新受状況(昭和33〜37年)

III-3図保護観察対象者の移動に伴う保護観察人員の増加状況(昭和37年)