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 昭和39年版 犯罪白書 第三編/第一章/六/3 

3 暴力組織関係受刑者の概況と特性

 暴力犯罪が暴力組織と密接な関連を持っていることは,さきに指摘したごとくであるが,ここではさらに暴力組織関係受刑者(以下暴力組織受刑者と称する)について,その概況と特性について考察しよう。
 法務総合研究所が法務省矯正局の協力をえて,昭和三九年一月一〇日現在で調査したところによると,全国刑務所に収容されている暴力組織受刑者は六,五二七人である。法務省司法法制調査部の調査によれば,昭和三八年一二月末日現在の全国刑務所の収容者は五三,八八八人で,このうち男子は五二,五五〇人であるから,調査時点に若干のずれはあるが,暴力組織受刑者はおおむね全受刑者(男子)中の一二・五%にあたっていることとなる。これら暴力組織受刑者の罪種はIII-51表に示すように,数の上では窃盗が最も多く一,二〇六人で,次いで恐かつ一,〇〇四人,殺人九六五人,傷害八三一人などの順になっており,麻薬犯罪も五四八人を占めている。これを主要罪種について,全受刑者(男子)中に占める比率の点から検討すると,暴力行為,銃砲刀剣類等所持取締法違反,売春防止法違反,とばくなどは,いずれも全受刑者の半数以上を占めており,また脅迫,麻薬なども半数近くの構成比率を示しており,これらの暴力犯罪または暴力に関連ある犯罪が組織受刑者になじみやすい罪種であることを物語っている。

III-51表 暴力組織関係受刑者の罪種

 さらにこの罪種を生命暴力犯罪,財産暴力犯罪,性暴力犯罪,粗暴犯罪,風俗犯罪,麻薬犯罪,単純財産犯罪およびその他の罪種群に分類して考察すると,暴力犯罪群が全体の六四・五%を占め,とくに財産暴力および粗暴犯罪群がそれぞれ二〇%を越える比率である。これに風俗および麻薬の暴力関連犯罪を加えると七四・六%となり,暴力組織受刑者の大部分が,これら暴力ならびに暴力に関連のある犯罪を犯して収容されていることを示している。
 III-52表によって言渡し刑期を罪種群別にみると,刑期の最も長い者は生命暴力群であって,性暴力,財産暴力,麻薬などがこれに次いでいる。最も短い者は風俗群で粗暴犯群も短い方である。

III-52表 罪種群別言渡刑期

 つぎにIII-53表によって,累犯(刑法上の累犯をいう。なお,ここでも罰金の前科の点は考察外とした)および入所度数をみると,全体としての累犯者率は五五・八%で,さきにみた全受刑者の累犯者率の傾向と大差はない。しかし,罪種群別にみると単純財産および麻薬群が,いずれも六五%以上の累犯者率を示していることが注意される。風俗群の中で準初犯者(前刑釈放以後五年以上再犯をしなかった者)の占める比率が,他に比して高いことは興味がある。入所度数は性暴力,生命暴力,財産暴力,風俗群の初入者率が平均より高くなっているが,単純財産および麻薬群は四入以上の頻回入所者が,いずれも平均をはるかに越えており,この罪種群の累犯性の深さを物語っている。累犯性に関連して,少年院経験の有無についてみると,III-54表に示すように全体的にみて少年院経験がある者は三四・〇%であって,罪種群別には単純財産群が著しく経験者率が高く,約半数を占めているほか,財産暴力,性暴力群が平均を上回っている。これに対して,風俗群に著しく入院経験者が少ないのは注意されよう。このほかここには資料として掲げなかったが,麻薬犯罪群の八三・四%が麻薬関係犯罪経験をもち,風俗犯罪群の三二・八%が売春関係犯罪経験をもっていることを付言する。

III-53表 罪種群別累犯および入所度数

III-54表 罪種群別少年院経験者率