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 昭和39年版 犯罪白書 第三編/第一章/四/3 

3 分類処遇

 分類調査の結果は,個別処遇を効率的に実現し,必要な設備を集約的に整備するため,まず同質の受刑者を一つのグループにまとめ,それぞれ一つの施設に分けて収容する形をとっている。このようなグループを分類級と呼んでいるが,入所時分類調査の目的の一つは,このような分類級の決定にあるといってよい。
 現在とられている分類級は,「所定の刑期を通じての矯正の可能性の見通し」を中心に,国籍別,性別,年齢別,刑期別,刑名別,心身の障害の有無など管理上の心要条件をかみあわせ,次の一一級となっている。
A 性格がおおむね正常で,改善容易と思われるもの
B 性格がおおむね準正常で,改善の比較的困難と思われるもの
G A級のうち二五才未満のもの
E G級のうち,おおむね二三才未満で,とくに少年に準じて処遇する必要のあるもの
以下の各級も,それぞれA(GまたはE)あるいはBに細分類する。
C 刑期の長いもの(おおむね実刑七年以上,ただし,東京管内一〇年以上,福岡,仙台管内八年以上,札蜆管内五年以上)
D 少年法の適用をうけるもの。
H 精神病(Hz,精神病質(Hy)および精神薄弱(Hx)などで,医療の対象とたるものK 身体の疾患(Kx),身体の故障(Ky)または老衰,虚弱(Kz)などにより,療養または養護を要するものJ 女子
M 外国人
N 禁錮
 現在の分類級別施設数および人員は,それぞれIII-29表およびIII-30表のとおりである。このなかには,地域の特殊性,該当人員,施設の整備,移送などの問題があって,一部の地域にのみ実施されているものもあるが,いずれも全国的に実施の要請されているものである。

III-29表 分類級別刑務所数(昭和39年1月20日現在)

III-30表 受刑者分類級別人員と率(昭和38年12月25日現在)

 分類制度は,級によってそれぞれ特異な処遇内容をもつことを前提とする。たとえば,A級やG級における職業訓練制度中心の処遇,医療刑務所における医療的処遇,業務上過失致死傷による禁錮受刑者が中心となっているN級における,法規および人命を尊重する態度のかん養をねらった生活指導と厳格な生活訓練に重点をおく処遇などに,その一端をうかがい知ることができる。ことにN級についての名古屋管内の豊橋刑務支所における分類処遇の効果は,高く評価され,東京管内では習志野作業場に,大阪管内では加古川刑務所に,それぞれN級を分隔収容することを,昭和三八年から開始した。
 分類が徹底すれば,精神障害者は,医療刑務所またはそれに準ずる特殊の施設に収容され,一般の施設の負担が軽くなるはずであるが,現在医療刑務所に,医療の対象として収容されているものは,六五二人で,III-31表中に示されている,精神障害者と診断されているもの(六,七九八人)の九・六%にすぎない。そのうち精神薄弱など特殊教育の可能なものを除き,医療の対象すなわちH級と分類されているものを拾っても,その四一・六%が医療刑務所に収容されているにすぎない。したがって,これらのものを収容できる医療刑務所の増設,特殊教育の対象のみを収容処遇できる施設の開設が,さしあたりの急務といってよいであろう。

III-31表 受刑者の精神状況調べ(昭和38年12月25日現在)

 また,従来,初犯者の多くは,A級として扱われてきたが,昭和三八年版犯罪白書でも指摘したように,三〇才未満の新受刑者(初犯)のなかには,保護処分をうけた経験のあるものが二四%に達していること,とくに少年院経験者に処遇困難者が多いことは,このような青年受刑者のための特別の処遇をくふうする必要のあることを示唆している。