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2 新受刑者 (一) 新受刑者の数 昭和三七年における新受刑者(年間新たに入所した受刑者をいい,死刑の執行を受けたもの二六人を含む)の数は,三五,九九六人(うち女子一,二四七人で三・五%にあたる)である。最近八年間の傾向をみると,III-3表(1)のとおり,その数は年年減少し,昭和三〇年の指数を一〇〇とすると,昭和三七年は六六となっている。
III-3表 (二) 新受刑者の性別 新受刑者の性別を比較してみると,昭和三七年には,男子三四,七四九人,女子一,二四七人で,その割合は,男子九六・五%に対し,女子三・五%となっている。前年に比較すると,男子では一,四三〇人(四%)減少しているが,女子では一四一人(一二・八%)の増加を示している。なお,男子は,昭和三〇年以降減少の傾向をたどり,昭和三七年には,昭和三〇年の六六%にまで減少しているが,女子はIII-3表(1)および(2)の示すとおり昭和三七年には,ここ数年間の均衡を破って,かなり著しい増加を示した。
(三) 新受刑者の年齢別 新受刑者の年齢別構成を百分比によってみると,III-4表のとおりで,二〇-二九才のものが全体の過半数を占め,次いで,三〇-三九才のものが三割弱を占めている。構成比率の面からもまた実数の面からも,前年に比して増加を示したのは三〇-三九才のもので,他の年齢群はいずれも減少している。しかし,全般的な傾向としては,二〇-三九才のものが受刑者の中心となっていることには前年と変りはない。
III-4表 新受刑者の年齢層別人員の比率(昭和30〜37年) なお,昭和三七年の新受刑者について,男女別年齢構成をみると,III-5表のとおりで,男女ともに二五-二九才のものがもっとも多い。しかも,男では,二〇-二四才のものが,二五-二九才のものと,ほぼ同じくらいの割合で多数を占め,二〇-二九才のものが,全体の過半数におよんでいるのに対し,女では,二〇-二四才,三〇-三四才,三五-三九才,四〇-四九才の四つの年齢層が,いずれも一六-一八%という割合を示している点が注目される。すなわち,男に比較して,女の方が,高年齢のものに幅広く分布しているといえる。III-5表 新受刑者の男女別年齢構成比較(昭和37年) (四) 新受刑者の刑名別 昭和三七年の新受刑者を刑名別にみると,III-6表のとおり,死刑(執行をうけたもの)二六人(全体の〇・一%),懲役三四,九七五人(九七・二%),禁錮八九八人(二・五%)および拘留九七人(〇・三%)となっている。
III-6表 新受刑者の刑名別人員の比率(昭和30〜37年) 最近,とくに懲役受刑者が減少している半面,禁錮受刑者の増加が目だっていることは,昨年も指摘したところであるが,昭和三七年に禁錮刑によって受刑したものは,昭和三六年に比較し四〇一人(八〇・七%),また同三五年に比較し五五四人(一六一・一%)の増加である。この増加は,業務上過失致死傷事件の増加によるものである。なお,昭和三七年の新受刑者のうち,女で禁錮,拘留および死刑の執行をうけたものは,ひとりもいなかった。 (五) 新受刑者の刑期別 昭和三七年の新受刑者のうち,懲役受刑者を刑期別にみると,III-7表のとおり,一年をこえるものが半数をこえ五一・六%を占めている。一年以下のものの占める割合は,逐年わずかずつではあるが減少し,昭和三七年に至って,五〇%を割った。
III-7表 新受刑者の刑期別人員の比率(昭和33〜37年) また,禁錮刑の場合にも,六月をこえる刑期のものの占める割合が増加している。(六) 新受刑者の犯数別 新受刑者を刑法上の累犯とそうでないものとに分けてその比率をみると,昭和三七年の新有期懲役受刑者三四,九二二人のうち,累犯は五八%で,III-8表の示すとおり,前年の比率より一・一%増加している。
III-8表 新受刑者の犯数別人員の比率(昭和30〜37年) (七) 新受刑者の入所度数,刑事処分歴および保護処分歴 (1) 入所度数 刑の執行を受けるために新たに入所した度数(復所または移送による入所度数等は含まない)についてみると,III-9表のとおり,昭和三七年には,全く初めてのもの四一%,二度目のもの一八・八%,三度目のもの一二・五%,四度目のもの九・一%,五度目のもの六・三%,六度目以上のもの一二・四%で,この割合は,前年とあまり大きな変化はない。
III-9表 新受刑者の入所度数別比較(昭和35〜37年) 次に,男女別にみると,女は男に比較して初めてのものが多く,四度目以上のものが少ないことも前年と変らない。(2) 刑事処分歴を有するもの 昭和三七年の新受刑者のうち,刑事処分歴のあるものは,III-10表のとおり,二六,八二五人(七四・五%)で,その内訳は,実刑が大部分を占め(二一,二一六人),単純執行猶予がこれに次いで多い。
III-10表 新受刑者刑事処分歴別人員(昭和36,37年) (3) 保護処分歴を有するもの 昭和三七年の新受刑者のうち,保護処分歴のあるものは,III-11表のとおり,五,七〇九人(一五・九%)で,実数においても,比率においても,前年より増加した。しかし,その内訳をみると,少年院送致が大部分を占めてはいるが(六〇・九%),実数,比率ともに,前年より減少し,その半面,教護院または養護施設送致になったもの,あるいは保護観察所の保護観察に付されたものがその実数,比率ともに増加している。
III-11 新受刑者の保護処分歴別人員(昭和36,37年) (4) 刑事処分歴と保護処分歴とをあわせ有するもの III-12表によれば,新受刑者のうち,刑事処分歴と保護処分歴とをともに有するものは,昭和三七年には三,九二四人(一〇・九%)であり,また,いずれの処分歴も有しないものは七,二七七人(二〇・二%)である。前年に比較し,両処分歴をあわせ有するものは,構成比率の面では,わずかの増加(一・四%)にすぎないが,実人員の面では,かなりの増加(一〇・三%)がみられた。これに対し,いずれの処分歴も有しないものの方では,前年とほとんど差がみられなかった。
III-12表 新受刑者の受けた刑事処分と保護処分との関係(昭和36,37年) (5) 入所度数と保護処分歴との関係 昭和三七年の新入受刑者について,入所度数ごとに保護処分歴の有無をみると,III-13表のとおり,一度目から三度目までのものでは,五人に一人の割で,保護処分をうけたものがおり,また八人に一人の割で少年院の経験者がいることがわかる。
III-13表 新受刑者の入所度数別保護処分歴別人員(昭和37年) (八) 新受刑者の罪名別 昭和三七年における新受刑者の罪名別構成比率をみると,III-14表に示すように逐年わずかではあるが,刑法犯が減少し,特別法犯が増加している。
III-14表 新受刑者の罪名別人員の比率(昭和33〜37年) 刑法犯のうち,新受刑者総数の半数以上を占めてきた窃盗が昭和三七年には四八%になり,強盗もわずかではあるが減少したが,恐かつ,傷害,過失傷害,殺人およびわいせつ,かんいんは,いずれもその実数,比率において,増加している点が注目される。特別法犯では,麻薬取締法違反(新受刑者総数の三・五%)および売春防止法違反(同じく一・三%)などの増加が目だっている。 (九) 新受刑者の国籍別 新受刑者の国籍別は,III-15表に示すとおり,日本人が大部分を占め,昭和三七年には,新受刑者の九五%(三四,一八八人)である。したがって,外国人は五%にすぎない。外国人では,朝鮮人一,七三三人(新受刑者の四・八%),中国人五二人(〇・一四%),アメリカ人一五人(〇・〇四%)などがあげられる。
III-15表 新受刑者の国籍別,罪名別人員と率(昭和37年) 日本人と朝鮮人とについて,罪名別構成比率を比較してみると,朝鮮人に高いのは,刑法犯では傷害,放火であり,特別法犯では麻薬取締法,覚せい剤取締法,出入国管理令などの違反で,刑名別にみても朝鮮人は特別法犯が多い。(一〇) 新受刑者の出生地および犯罪地 昭和三七年の新受刑者について,その出生地をみると,東京が最も多く(二,九三二人,新受刑者全体の八・一%で,前年より一〇九人増)以下,北海道(二,二四七人,六・二%,前年より九四人減),大阪(二,一九四人,六・一%,前年より一五七人減),福岡(二,〇九二人,五・八%,前年より四七人減),兵庫(一,七三一人,四・八%,前年より二七人増)などがつづき,内地では,鳥取が昨年同様,最も少ない(二〇一人,〇・五六%,前年より九人減)。
犯罪地についても同様に,東京が最も多く(五,五三六人,新受刑者全体の一五・四%),以下,大阪(三,六七三人,一〇・二%),兵庫(二,四八五人,六・九%),神奈川(二,三九二人,六・六%),北海道(二,三五六人,六・五%),の順となり,内地で最も少ないのは,島根(一二三人,〇・三%)である。 (一一) 新受刑者の入所前職業 新受刑者の入所前(犯行時)の職業についてみると,III-16表のとおり,有職者の割合は,昭和三七年には六〇・二%で,前年の六一・八%をやや下回った。しかし,女の有職者の割合は,前年の二〇・五%をやや上回り,二二・八%となっている。
III-16表 新受刑者のうち有職者の比率の推移(昭和33〜37年) 次に,有職者の内訳をみると,III-17表のとおり,男では,専門的技術的職業従事者および運輸従事者の占める割合の増加が目たち,女では,農林漁業等の従事者およびサービス業従事者を除いて,すべての分野にわたって増加がみられる。III-17表 新受刑者のうち有職者の職業別比率(昭和36,37年) なお,無職者についてみると,III-18表のとおり,不正な手段による生活者が男女とも前年より多く,浮浪者,らい怠者が相変らずあとを絶たない点が注意される。III-18表 新受刑者のうち無職者の内訳(昭和36,37年) |