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4 暴力組織関係者の特性 次に,これら暴力組織関係者の個人的特性について考察しよう。暴力組織に加入している者の実態については,もちろん一般的には正確には握する方法がないので,ここでは法務総合研究所が法務省矯正局と協力して,昭和三九年一月一〇日現在で全国刑務所に収容されていた暴力組織関係受刑者六,五二七人に対して行なった実態調査資料を基礎として述べることとする。なお,昭和三八年一二月末日現在の刑務所収容受刑者男子総人員は五二五五〇人である。
まず,年齢についてみると,I-44表に示すように,最も多い年齢層は二五〜二九才で三一・九%,ついで二〇〜二四才二九・四%,三〇〜三五才二三%の順となっており,青年壮年層が全体の八割以上を占めていることが注目される。教育歴は五一・三%が新制中学または高小のみの卒業で終っているが,それ以上の学校に進学した者が二五・三%あり,また小学校以下の者および中学,高校などを中途退学した就学不全者が四〇・九%を占めていることが注意される。生育地は,関東地方が二一・八%で最も多く,次いで近畿一七・八%,九州一六・五%,中国一〇・六%,北海道一〇・六%などの順になっており,東北,四国地方は五〜六%にすぎない。九州地方の出身者の数は,一,〇八〇人で,同地方の人口に対比しかなり多いことが指摘されよう。配偶関係は,独身者が四三・七%で,配偶者のある者のうち五八・五%が内縁関係である。収入源は,定職による収入ある者は一九・二%であるのに対して,組関係の収入で生計をたてている者が三三・一%を占めている。収入不定,無収入という者も,それぞれ二〇%台である。次に,暴力組織との関係をみると,加入動機で多いものは,「誘われて」二九%,「ぐれて」二三・五%であり,「やくざ生活にあこがれて」という者も一七・一%いる。加入後の経過期間は,一年未満一二・一%,三年未満二八・四%,五年未満二〇・五%,一〇年未満二一・二%などであって,全体の六割以上が五年にみちていない。累犯者は五八・八%を占め,入墨のある者も五九%に達している。 I-44表 暴力組織関係受刑者年齢別表 このように,暴力組織関係者の大部分は,比較的年齢が若く,生活状態も不安定で,暴力組織とのつながりも,さほど長くはないが,犯罪性はかなり進んだ者によって占められているとみられる。しかし,これらの諸特性は暴力組織内で本人の占める地位によって,かなりな差異がみられるので,この点について,もうすこし詳しく検討すると,暴力組織の幹部と組員との間の特性上の主要な差はつぎのようである。(1) 幹部には年齢の高い者が多く,三〇才代の者が六〇%近くであるのに対して,組員は二〇才代の者が六六%を占めている。 (2) 学歴は,一般に幹部の方がやや高く,旧制中学,新制高校以上に進んだ者が三二・九%あるのに対して,組員は二四・二%である。 (3) 生育地は明りような差ではないが,幹部に多いのは関東,九州で,組員に多いのは北海道,東北 四国などである。 (4) 配偶関係では,幹部は正妻を持っている者が五一・二%であるのに対して,組員では一八・八%にすぎず,逆に独身者が四六・一%を占めている。 (5) 幹部の五七・九%は組関係の収入に依存しているが,組員の四五%は収入不定または無収入である。 (6) 加入の動機は,幹部の四〇・七%が「やくざにあこがれて」組織に加入しているのに対して,組員は「誘われて」三〇・五%,「ぐれて」二六・五%,「知人の紹介」一二・五%などの理由によっている。 (7) 組織加入期間は,幹部の方が明らかに長く,五年以上が八二・九%であるのに対して,組員の六七・四%が五年未満である。 (8) 幹部に多い罪種は殺人などの生命暴力犯罪および売春,とばく,たばこ専売法違反などの風俗犯罪であって,組員に多い罪種は強盗,恐かつなどの財産暴力犯罪,傷害,暴行,脅迫などの粗暴犯罪,窃盗などである。 (9) 累犯性については幹部の方が明らかに高く,累犯者率は七三・四%であるのに対して,組員は五八・二%である。しかし,少年院経験者は,逆に幹部の方に少なく一四・一%であるのに対して,組員は三六・五%を占めている。 (10) 入墨をしている者は,組員に多く五九・一%であるが,幹部は三〇・八%にすぎない。 したがって,暴力組織の幹部になる者は年齢も学歴も高く,組織にみずから進んで加入し,長期間組織内で生活している者で,主として,組関係の収入に依存し,正式結婚をしているとみられ,その犯罪行為も組織関係の殺人,組織自体の財源に関連をもつ罪種が多く,累犯性もかなり強いものがある。それに対して組員は年齢も二〇才代で,加入の動機もいわば受動的なものが多く,組織生活経歴も短かく,収入も不安定で,独身者であることが特色で,入墨などをして虚勢を張るが,その犯罪行為は財産犯罪,粗暴犯罪が多いというわけである。 |