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 昭和39年版 犯罪白書 第一編/第三章/五/3 

3 暴力組織関係犯罪の質的傾向

 暴力組織関係者の暴力犯罪,暴力関連犯罪との親近性については,さきに述べたところであるが,ここではさらに,その質的特性について最近の特記すべき傾向について述べよう。
 第一の傾向は,暴力組織構成員中の前歴者の増加ということである。暴力組織構成員のすべてが犯罪と親近性が強いとは,必ずしも断定しえないところであるが,最近の暴力組織構成員の中で占める前歴者の比率は年年増大しつつある。I-40表は,最近六年間における暴力組織構成員数と前歴者数とを対比したものであるが,これによると昭和三三年に五五,八一一人,六〇・一%であった前歴者数および比率は,その後累年上昇し,昭和三八年には,じつに一五二,二四三人,八二・七%と,暴力組織構成員の全体をおおう勢いをみせている。

I-40表 暴力団構成員の前歴者数(昭和33〜38年)

 第二の傾向は,対立抗争事犯の多発激化ということである。この点については,前項でその背景となる動向を指摘したところであるが,I-41表によってその実態をみると,昭和三八年におけるこの種事犯は一二三件であって,昭和三三年の二倍に近くなっている。とくに一部の強力な広域暴力組織が,これらの対立抗争に介入した事犯は,昭和三八年において六五件で,全事犯の過半数を占め,前年より三五件の増加となっている。これらの広域暴力組織の介入事犯を地域別にみると,中国地方が最も多く,ほとんどの対立抗争事犯が,広域暴力組織の介入を伴なって発生している。近畿1,関東地方における介入事犯も平均を上まわっており,これらの地域に暴力組織の系列化と,これをめぐる抗争が活発に展開されていることを示している。

I-41表 各管区別対立抗争事件数(昭和33〜38年)

 第三の傾向は,凶器を使用した犯罪が増加していることである。I-42表は,最近五年間における凶器の押収状況を示しているが,これによると,けん銃およびその他の銃砲,刀剣類等の押収数は累年増加しており,昭和三四年の指数を一〇〇とした場合,昭和三八年にはけん銃二〇四,その他の銃砲三〇七,刀剣類二二七と,いずれの凶器も二倍以上の増加となっている。また暴力組織関係者による銃砲刀剣類等所持取締法違反事件も,昭和三六年には一,九七五件であったものが,三七年には二,一八七件,三八年には二,五〇七件と累増のすう勢にある。このような凶器の不法所持,使用は対立抗争事犯と関連を持っており,暴力組織相互間の抗争に備えて準備される場合が多い。凶器準備集合罪による暴力組織関係者の検挙件数が,昭和三三年の三二件以来累年増加の一途をたどり,昭和三八年には一一二件に達していることも,この間の事情を物語るものといえよう。

I-42表 暴力団関係犯罪押収凶器数累年比較(昭和34〜38年)

 第四の傾向は,一部の暴力組織における検挙者の増加ということである。暴力組織関係者の検挙人貝が,おおむね横ばい,ないしは,てい滅の状態にあることは,さきにも指摘したところであるが,I-43表によって,さらに暴力組織の種類別に検討すると,会社ごろ,新聞ごろ,青少年不良団,炭坑,売春,港湾暴力団等の検挙人員には,明らかな傾向はみられないのに対して,ぼく徒およびテキ屋の検挙人貝は明らかに増勢にあり,とくに,ばく徒は昭和三二年に三,二八七人であったものが,累年増加を続け,昭和三八年には九,七二四人と三倍近くの検挙人員をみるにいたっている。この傾向を正確に理解するためには,暴力組織の種類別構成員数の消長,組織の実態の解明の進度その他の取締り活動の強弱などをも考慮に入れなければならないが,しかしこの範囲においても,一部の暴力組織構成員の犯罪実行の頻度が高まりつつあることも疑われ留意を要する点である。

I-43表 年次別暴力団の所属団体別検挙人員(昭和32〜38年)