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 平成16年版 犯罪白書 第5編/第4章/第1節/1 

第1節 出所前に実施される諸施策

1 在所中から始まる環境調整

(1)犯罪者の社会復帰に当たり,釈放後の帰住環境は重要な要素となる。出所後の再犯を防止するためには,犯罪の原因となる要因を除去し,釈放後の帰住環境を整えておくことが有益であり,保護観察所は,そのような観点から環境調整業務を行っている。受刑者の環境調整は,仮出獄審理の判断要素にとどまるものではなく,個々の受刑者の更生にふさわしい帰住先を見いだし,その環境を整えておくという点で,より積極的に受刑者の社会復帰を支援する意義を有している。
(2)行刑施設の長は,懲役又は禁錮に処せられた者を収容したときは,身上調査書を作成して帰住予定地を管轄する保護観察所の長に送付することとなっており,これを受けた保護観察所の長は,担当の保護観察官・保護司を指名して環境調整の実施に当たらせる。担当者は,引受人その他の関係者との協議,受刑者との面接・通信などを通じて,引受人及びその家庭の状況,近隣の状況,当該犯罪に対する社会の感情,被害者の感情及び被害弁償の状況,受刑者の生活状況や交友関係,釈放後の学業,職業,生計の見込み等について広く調査し,さらに,必要と認められる事項について調整を行う。調整を続けても帰住先の環境が更生にふさわしいものとなり得ないことが判明した場合には,受刑者本人に帰住先の変更を促した上,新たに環境調整が実施される。環境調整の結果は,仮出獄審理における重要な資料となり,また,行刑施設における処遇上の参考資料となるだけでなく,仮出獄後又は満期釈放後の社会復帰の基礎となる。
(3)更生保護制度の発足当初(昭和24年7月),環境調整の対象は,執行刑期1年以上の受刑者等に限られていたが,28年に実施範囲が拡大され,ほぼすべての受刑者について環境調整が行われるようになった。
 5-4-1-1図は,保護観察所が受理した受刑者に係る環境調整事件の新受件数の推移を見たものである。同新受件数の動向は,新受刑者数の増減と連動するため,平成8年から一貫して増加しており,15年は4万5,399件となった。

5-4-1-1図 受刑者に係る環境調整事件新受件数の推移