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 平成16年版 犯罪白書 第5編/第3章/第1節/1 

第1節 過剰収容の深刻化――過剰収容とはどういうことか

1 過剰収容の現状

 我が国の刑務所では,実際の収容人員が収容定員を上回る過剰収容が深刻化している。そこで,まず,既決の収容動向について概観し,過剰収容の現状を見ることとする。

(1) 全体的な収容動向の推移

 資料上,行刑施設の収容定員を,既決と未決とに分けて把握し得るのは昭和47年からである。そこで,同年以降各年末における既決の収容定員,収容人員及び収容率の推移を見ると,5-3-1-1図[1],[2]のとおりである。また,同図[3]は,既決の収容人員の推移を戦後を通じて見たものである。

ア 収容人員

 戦後の混乱期に急増した既決の収容人員は,昭和30年代から40年代にかけて減少し,49年,50年には3万8,000人弱となった。その後,緩やかに増減して,平成3年から6年にかけて再び3万7,000人台という低い水準で横ばいを続けた後,7年からの増加が顕著となり,以後,増加を続けて現在に至っている。特に,11年以降は,毎年2,000人〜4,000人台の増加を記録しており,15年年末においては6万1,534人となった。既決の年末収容人員が6万人を超えたのは,昭和35年以来,43年ぶりのことである。

イ 収容定員

 既決の収容定員は,昭和47年以降おおむね4万6,000人から4万9,000人の間で推移していたが,平成15年に初めて5万人を超え,前年より3,474人増の5万2,783人となった。

ウ 収容率

 既決の収容率は,昭和47年以降,長らく100%以下で推移し,平成3年から7年までは80%以下の水準で横ばいを続けていたが,8年からは上昇傾向が顕著となり,12年に初めて100%を突破すると,14年には116.5%(7年と比較して37.5ポイントの上昇)に達した。15年年末における収容率は116.6%で,前年とほぼ同じであるが,これは収容定員の増加によって,収容人員増が吸収されたためである。

エ 小括

 以上のとおり,既決の収容人員は平成7年ころから急増し,これに伴って収容率も100%を大幅に上回るに至っており,最近における既決の収容状態は,過去30年ないし40年の間で最も厳しい状況にあるといえる。

5-3-1-1図 行刑施設の収容動向(既決)

 参考までに,既決・未決を併せた戦後の収容動向を図示すると,5-3-1-2図のとおりである。既決・未決を併せた収容率は,戦後の混乱期に極めて高い値を示した後低下し,昭和42年以降長らく100%以下で推移していたが,平成13年に35年ぶりに100%を超え,15年は105.8%となっている。

5-3-1-2図 戦後における行刑施設の収容動向(既決・未決合計)

(2) 各施設の現状

 5-3-1-3図(267頁)及び5-3-1-4表(268頁)は,平成15年年末現在における全国各刑務所,刑務支所及び少年刑務所の収容定員,実際の収容人員,収容率等を示したものである。
 ほぼすべての施設(72施設中64施設)が100%を超える過剰収容となっており,その中でも,収容率が120%を超えるものが29施設ある。なお,収容率が100%に満たない施設の半数余りは医療刑務所である。医療刑務所の収容率が低いのは,急病者の収容などの事態に対応するため,定員以下で運営する必要があるからである。