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 平成16年版 犯罪白書 第4編/第2章/第6節/4 

4 各種の処遇施策

(1) 分類処遇制度

 分類処遇制度(第2編第5章第3節3及び第5編第5章第4節1参照)は,保護観察対象少年にも実施されている。分類処遇制度で処遇困難と予測されるAに分類された者は,平成15年12月31日現在,保護観察処分少年では5.7%,少年院仮退院者では22.5%であった(2-5-3-3図参照)。少年院仮退院者でA分類の比率が高いのは,この種の対象者中に更生上の問題を有する者が多いことを示している。A分類対象者に対しては,保護観察官が本人に対する直接的な関与を強めるとともに,担当保護司との連絡・協議を密接に行うなどして,効果的な処遇に努めている。

(2) 類型別処遇制度

 保護観察対象少年には,類型別処遇(第2編第5章第3節3及び第5編第5章第4節1参照)も実施されている。少年に関連する類型の種類には,シンナー等乱用,覚せい剤事犯,性犯罪等,中学生,無職等,暴走族などがある。4-2-6-7表は,保護観察処分少年及び少年院仮退院者について,平成15年12月31日現在で主要な類型に該当している者の比率を見たものである。いずれも,暴走族,次いで,シンナー等乱用類型に該当する者の比率が高く,特に少年院仮退院者では,暴走族該当が27.7%,シンナー等乱用該当が15.2%であった。保護観察所においては,各類型用の処遇手引を作成し,保護観察官及び保護司がこれを活用しながら処遇に当たっているほか,庁によっては,シンナー,覚せい剤等薬物乱用類型に該当する者について,本人やその家族を対象として集団処遇を行うなどして,効果的な処遇に努めている。
 なお,第5編第5章第4節1に記述したとおり,改正された類型別処遇制度が平成15年4月から実施されているが,保護観察処分少年及び少年院仮退院者に関しても,従来からあった「家庭内暴力」類型に,子供への暴力についての性的虐待やネグレクト,心理的虐待をも含めるなど,類型対象範囲が拡大されている。

4-2-6-7表 保護観察対象少年の類型別該当率

(3) 交通短期保護観察

 交通短期保護観察は,家庭裁判所で決定された保護観察処分として実施されるもので,交通関係の非行性が固定化していない少年に対して,保護観察官と保護司による個別指導に代えて,安全運転等に関する集団処遇を行うとともに,少年に生活状況を毎月書面で報告させ,車両の運転による再非行がなければ,原則として3月以上4月以内の短期間に保護観察を解除するものである。4-2-6-8表は,最近5年間における交通短期保護観察少年の新規受理・終了人員及び集団処遇の実施状況を見たものである。

4-2-6-8表 交通短期保護観察少年の新規受理・終了人員及び集団処遇実施状況

(4) 短期保護観察

 短期保護観察は,交通関係業過及び交通関係法令違反以外の非行により,家庭裁判所で保護観察処分に付された少年のうち,非行性の進度がそれほど深くなく,短期間の保護観察によって改善更生が期待できる者を対象としている。保護観察官と保護司による個別処遇によって行われるが,おおむね6月以上7月以内の短期間を実施期間とし,生活習慣,学校生活,就労関係,家族関係,友人関係等の領域から,少年の更生にとって特に重要な領域を選び,そこでの問題の改善を促進させるための課題を少年に履行させることを処遇の中心に置いている。

(5) 社会参加活動

 社会参加活動は,保護観察官と保護司による個別指導に加えて,保護観察対象者を老人ホーム等での介護補助や公園の清掃等の社会奉仕活動を始め,スポーツ,創作・体験活動等様々な活動に参加させ,社会性の発達を促そうとするものである。主に,保護観察処分少年を対象に実施され,短期保護観察少年に与える課題の一つとされることも多い。平成15年度においては,全国で593回(前年度513回)実施され,1,599人(同1,587人)の保護観察対象者が参加している(法務省保護局の資料による。)。