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 平成16年版 犯罪白書 第2編/第6章/第1節/3 

3 その他の国際会議

 その他の国際会議等においても,刑事司法に関する国際的な取組が進展している。例えば,1997年に経済協力開発機構(OECD)において採択された国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約に関し,我が国は,同条約を国内において実施するため不正競争防止法(平成5年法律第47号)を改正して外国公務員等に対する不正の利益の供与等の罪を新設し,同条約は我が国についても1999年に発効している。
 また,欧州評議会では,国境を越えて敢行されるいわゆるサイバー犯罪に効果的に対処するために,法的拘束力ある国際文書の作成が必要であるとの認識が高まり,1997年に設置されたサイバースペースにおける犯罪に関する専門家会合において,条約の起草作業が進められていたところ,2001年,欧州評議会において,サイバー犯罪に関する条約が採択され,我が国は,同年,同条約に署名し,同条約は,2004年4月にその締結について国会により承認された。同条約は,世界初の包括的なハイテク犯罪対策に関する条約であり,[1]コンピュータ・システムに対する違法なアクセス,コンピュータ・データの違法な傍受,コンピュータ・ウィルスの製造,児童ポルノのコンピュータ・システムを通じた頒布等,一定の行為を犯罪とすることを締約国に義務付け,[2]これら一定の犯罪にとどまらず,およそコンピュータ・システムによって行われる犯罪に広く適用されるものとして,電子的な証拠一般を対象とするコンピュータ・データの捜索・押収手続の整備や,データの保全命令等の捜査手法を可能とする措置を求め,[3]捜査共助,犯罪人引渡し等の国際協力について規定している。
 さらに,1983年に欧州評議会で採択された,外国人受刑者を母国に移送して母国で服役させる制度を創設することを内容とする「刑を言い渡された者の移送に関する条約(いわゆる受刑者移送条約)」について,我が国は,2002年に国際受刑者移送法(平成14年法律第66号)が成立するとともに,条約締結のための国会承認が得られたことから,2003年2月に同条約への加入書を寄託し,同条約は,同法律と共に,同年6月から我が国においても効力を生じ,2004年5月12日には,同法律に基づき,英国人受刑者1名が英国に移送された。我が国は,さらに,増加する中国人受刑者の中国への移送を実現するため,同条約への中国の加入又は我が国と中国との間の受刑者移送に関する国際約束の締結について,中国側に対し非公式な打診を開始している(第5編第3章第3節5参照)。