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 平成16年版 犯罪白書 第1編/第1章/第1節/2 

2 窃盗を除く一般刑法犯の動向

 ここでは,一般刑法犯のうち,窃盗以外のものについて,その動向を見ることとする。1-1-1-6図は,窃盗を除く一般刑法犯の認知件数,検挙件数,検挙人員及び検挙率の推移を最近30年間について見たものである。
 認知件数は,平成12年以降急増しており,15年は戦後初めて50万件を突破して55万4,600件となった。
 検挙件数は,平成7年からほぼ横ばいで推移していたが,13年以降大幅に増加しており,15年は対前年比2万5,900件(13.7%)増の21万4,709件であった。検挙人員も増加傾向にあり,15年は,対前年比2万1,352人(12.8%)増の18万8,507人となった。検挙件数は昭和46年以降,検挙人員は47年以降の最多であるが,それにもかかわらず,検挙率は,低下しており,平成15年は戦後最も低い38.7%となった。
 窃盗を除く一般刑法犯は,平成12年以降,対前年比22.4%,26.5%,20.6%,16.4%と急激なペースで認知件数が増加したため,検挙件数の増加が追いつかず,このことが検挙率を急激に低下させた要因の一つと考えられる。

1-1-1-6図 窃盗を除く一般刑法犯の認知件数・検挙件数・検挙人員・検挙率の推移

 1-1-1-7図は,主要な罪名について,最近20年間における認知件数,検挙件数,検挙人員及び検挙率の推移を見たものである(巻末資料1-2及び1-3参照)。
 殺人の認知件数は,長期減少傾向を経て横ばいないし微増傾向が続いており,平成15年は1,452件で,平成に入って最多となった。殺人の検挙率は94〜98%台で安定しており,世界でもまれにみる高水準を維持している。
 強盗は,近年増加が著しく,平成15年における認知件数は7,664件(対前年比9.7%増),検挙率は50.3%(対前年比0.8ポイント低下)であった。
 その他の罪名について認知件数を見ると,暴力的色彩の強い罪種のうち,暴行,脅迫,強姦,強制わいせつ,住居侵入及び器物損壊については増加が続いているが,恐喝は2年連続して減少を示した。他方,知能犯である詐欺は,平成13年まで横ばいないし減少傾向にあったが,その後,対前年比14.8%,21.9%と2年連続して大幅な増加を見せ,15年の認知件数は6万298件となった。詐欺が急増した要因の一つとして,いわゆるオレオレ詐欺の急増が挙げられる(本節4(5)参照)。
 検挙率に目を転ずると,ここ数年低下傾向が続いていた傷害,暴行,恐喝,強姦及び強制わいせつについて,平成15年は横ばいないし若干の上昇が見られたが,詐欺については,検挙率の大幅な低下が続いており,同年は対前年比13.4ポイント減の50.4%であった。

1-1-1-7図 刑法犯の主要罪名別認知件数・検挙件数・検挙人員・検挙率の推移