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 平成15年版 犯罪白書 第5編/第6章/第1節/1 

第6章 凶悪犯罪の刑事処分及び処遇の実情

第1節 検察と裁判

1 検察における処理

 5―6―1―1図は,殺人・強盗の検察庁における終局処理人員と起訴率及び起訴猶予率の推移を見たものである。
 殺人の公判請求人員はほぼ横ばいであるが,最近数年間はやや増加傾向にある。その年によって起訴率が22.2〜65.9%とばらつきがあるが,これは,心神喪失・時効完成で不起訴となるものや,検察庁で受理した罪とならず・嫌疑なし等で不起訴となる告訴事件等そもそも犯罪として処罰することが不可能な理由による「その他の不起訴」の人員が非常に多い上に,これが増減するためであって,証拠上嫌疑が十分認められながら不起訴となる場合は実際には少ない。起訴猶予率(「その他の不起訴」と「嫌疑不十分による不起訴」を除外した人員に占める不起訴の率)が3.7〜10.7%程度であるから,言い換えれば嫌疑が十分に認められれば,89.3〜96.3%が公判請求されている。
 また,起訴猶予率は他の罪種に比べると低い部類に属し変化が少ない一方で,嫌疑不十分による不起訴は極めて少ないことから,殺人については従前から十分な証拠収集が行われて嫌疑が認められれば約9割以上が起訴されていることが認められる。
 強盗は,殺人と異なり平成8年以降公判請求人員も家庭裁判所送致人員もほぼ増加傾向にあり,公判請求人員で14年に8年の約2.5倍,家庭裁判所送致人員で約1.5倍となっている。その他の不起訴は少なく,起訴率は70.2〜85.6%と高く,起訴猶予率は3.5〜8.8%と殺人同様に低く,嫌疑不十分による不起訴も極めて少ない。殺人同様に従前より十分な証拠収集をし,嫌疑が十分に認められれば91.2〜96.5%が起訴されている。
 以上のように,殺人及び強盗といった凶悪犯罪は,被害者保護の見地からも,犯罪抑止の一般予防,犯罪者に再犯をさせない特別予防の見地からも,検察が最も厳しく対処している犯罪の一つである。

5―6―1―1図 殺人及び強盗における検察庁終局処理状況の推移