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 平成15年版 犯罪白書 第4編/第2章/第1節 

第2章 非行少年の処遇

第1節 処遇の概要

 4―2―1―1図は,非行少年に対する処遇の流れを示したものである。
 警察等は,犯罪少年(交通反則金納付事件に係るものを除く。)を検挙した場合,罰金以下の刑に当たる犯罪については,事件を直接家庭裁判所に送致し,それ以外の犯罪については,検察官に送致する(犯罪少年,触法少年及び虞犯少年の概念については,本編第1章参照)。犯罪少年の事件送致を受けた検察官は,捜査を遂げた上,犯罪の嫌疑があると認めるとき,又は犯罪の嫌疑がない場合でも虞犯等で家庭裁判所の審判に付すべき事由があると認めるときは,処遇意見を付けて,事件を家庭裁判所に送致する。
 検察官は,やむを得ない場合でなければ勾留を請求することはできず,裁判官は,少年を勾留する場合には,少年鑑別所に拘禁することができる。また,検察官は,裁判官に対して,勾留の請求に代えて観護の措置を請求することができ,その場合,裁判官が発する令状によって,少年は少年鑑別所に収容される。
 触法少年及び14歳未満の虞犯少年については,児童福祉法上の措置が優先される。保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認める児童を発見した者は,これを都道府県の福祉事務所又は児童相談所に通告しなければならないとされており,家庭裁判所は,都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り,これらの少年を審判に付することができる。
 14歳以上の虞犯少年については,原則として,これを発見した者が家庭裁判所に通告しなければならないとされている。警察官又は保護者は,この虞犯少年が18歳未満であり,かつ,直接これを家庭裁判所に送致し,又は通告するよりも,まず児童福祉法による措置にゆだねるのが適当であると認めるときは,その少年を直接児童相談所に通告することができる。
 事件を受理した家庭裁判所は,家庭裁判所調査官に命じて,少年,保護者又は関係人の行状,経歴,素質,環境等について,少年,保護者又は参考人の取調べその他必要な調査を行わせるほか,審判を行うため必要があるときは,観護の措置の決定により,少年を少年鑑別所に送致してその身柄を一定期間収容し,資質鑑別を求めることができる。
 観護の措置の決定により,少年を少年鑑別所に収容する期間は,原則として2週間を超えることができないが,特に継続の必要があるときは,更新することができる。この更新は1回を超えて行うことができない。ただし,犯罪少年に係る死刑,懲役又は禁錮に当たる罪の事件でその非行事実の認定に関し証人尋問,鑑定若しくは検証を行うことを決定したもの又はこれを行ったものについて,少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には,更に2回を限度として更新することができる。したがって,この場合は少年鑑別所への収容の期間は,通じて8週間が限度となる。

4―2―1―1図 非行少年の処遇の流れ

 少年鑑別所は,医学,心理学,教育学,社会学その他の専門知識に基づき,少年の資質鑑別を行い,その結果は家庭裁判所に提出される。
 また,家庭裁判所は,少年に係る事件の被害者等(被害者又はその法定代理人若しくは被害者が死亡した場合におけるその配偶者,直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)から,被害に関する心情その他の事件に関する意見の陳述の申出があるときは,自らこれを聴取し,又は家庭裁判所調査官に命じてこれを聴取させる。
 家庭裁判所は,調査の結果,審判に付することができず,又は審判に付することが相当でないと認めるときは,審判不開始決定をして事件を終局させ,また,審判を開始するのが相当と認めるときは,審判開始の決定をする。審判の結果,保護処分に付することができず,又は保護処分に付する必要がないと認めるときは,不処分の決定をしなければならない。
 家庭裁判所における審判は,通常一人制で行われるが,合議体で審判をする旨の決定を合議体でした事件においては,裁判官の合議体でこれを取り扱う。審判は非公開で,懇切を旨として,和やかに行うとともに,非行のある少年に対し自己の非行について内省を促すものとしなければならないとされている。審判期日には,少年,保護者及び付添人を呼び出し,原則として家庭裁判所調査官を出席させるほか,審判の席に,少年の親族,教員,その他相当と認める者に在席を許すこともある。また,保護観察官,保護司及び少年鑑別所に勤務する法務教官・法務技官は,裁判官の許可を得て意見を述べることもできる。さらに,家庭裁判所は,犯罪少年に係る事件であって,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪,そのほか死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪のものにおいて,その非行事実を認定するための審判の手続に検察官が関与する必要があると認めるときは,決定をもって,審判に検察官を出席させることができる。なお,その場合,少年に弁護士である付添人がないときは,弁護士である国選付添人を付さなければならない。
 少年及び保護者は,家庭裁判所の許可を受けて,弁護士以外の者を付添人に選任することができるが,弁護士を付添人に選任するには,家庭裁判所の許可を要しない。また,保護者は自ら,家庭裁判所の許可を受けて,付添人となることができる。
 家庭裁判所は,審判の結果,保護処分に付することを相当と認める場合には,保護観察,児童自立支援施設・児童養護施設送致,少年院送致のいずれかの決定を行う。
 また,家庭裁判所は,必要があると認めるときは,保護者に対し,少年の監護に関する責任を自覚させ,その非行を防止するため,調査又は審判において,自ら訓戒,指導その他の必要な措置をとり,又は家庭裁判所調査官に命じてこれらの措置をとらせることができる。
 なお,家庭裁判所は,保護処分を決定するため必要があると認めるときは,相当の期間,家庭裁判所調査官に少年を直接観察させる試験観察に付することができる。
 家庭裁判所は,少年に係る事件を終局させる決定をした場合,決定確定後3年の間に当該事件の被害者等から申出があるときは,その申出をした者に対し,加害少年の氏名,住居,終局決定の内容等を通知する。ただし,その通知をすることが当該少年の健全な育成を妨げるおそれがあり相当でないと認められるものについては,この限りではない。なお,審判中及び審判確定後3年の間に,被害者等から当該事件の記録の閲覧又は謄写について申出があるときは,損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合その他正当な理由がある場合であって,少年の健全な育成に対する影響,事件の性質等の事情を考慮して相当と認めるときは,申出をした者に当該事件の記録の閲覧又は謄写をさせることができる。
 保護処分の決定に対しては,決定に影響を及ぼす法令の違反,重大な事実の誤認又は処分の著しい不当を理由とするときに限り,少年,その法定代理人又は付添人から抗告することができる(ただし,付添人は,選任者である保護者の明示した意思に反して,抗告することはできない。)。検察官は,検察官関与の決定があった事件については,保護処分に付さない決定又は保護処分の決定に対し,非行事実の認定に関し,決定に影響を及ぼす法令の違反又は重大な事実の誤認があることを理由とするときに限り,高等裁判所に対し,抗告審として事件を受理すべきことを申し立てることができる。
 家庭裁判所は,調査又は審判の結果,児童福祉法の規定による措置を相当と認めるときは,事件を知事又は児童相談所長に送致し,死刑,懲役又は禁錮に当たる罪の事件について,刑事処分を相当と認めるときは,事件を検察官に送致する。また,家庭裁判所は,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であって,その罪を犯すとき16歳以上の少年に係るものについては,犯行の動機及び態様,犯行後の情況,少年の性格,年齢,行状及び環境その他の事情を考慮し,刑事処分以外の措置を相当と認めるときを除き,事件を検察官に送致しなければならない。送致を受けた検察官は,原則として公訴を提起しなければならないとされている。
 起訴された少年に対するその後の処遇の流れは成人の場合と同様であるが,犯行時18歳未満の者に対しては,死刑をもって処断すべきときは無期刑を科し,また,無期刑をもって処断すべきときであっても,10年以上15年以下において懲役又は禁錮を科すことができるとの特則がある。さらに,少年に対して長期3年以上の有期の懲役又は禁錮をもって処断すべきときは,その刑の範囲内において不定期刑(刑の短期と長期を定める。)を言い渡すことなどの特則がある。また,懲役又は禁錮の言渡しを受けた少年に対しては,それ以外の受刑者とは区分して刑を執行することとされている。なお,刑の執行につき,懲役又は禁錮の言渡しを受けた16歳未満の少年は,16歳に達するまでの間,少年院において,その刑を執行することができ,この場合,懲役刑を科された少年であっても,その間作業を課されることはなく,少年院で矯正教育を受ける。
 少年のとき懲役又は禁錮の言渡しを受けたものには,無期刑については7年,罪を犯すとき18歳未満であったことにより,無期刑をもって処断すべきところを有期刑の言渡しを受けたものについては3年を経過した後,仮出獄を許すことができるとする特則がある。ただし,罪を犯すとき18歳未満であったことにより,死刑をもって処断すべきところを無期刑の言渡しを受けたものについては,無期刑について7年との規定は適用されない。
 家庭裁判所の決定により保護観察に付された少年は,原則として,20歳に達するまで,保護観察官及び保護司の指導監督を受け,改善更生のために必要な補導援護を受けるが,その期間中に行状が安定し,再犯のおそれがなくなったと認められた場合は,保護観察の解除等の措置がとられる。
 児童自立支援施設・児童養護施設送致となった少年は,児童福祉法による施設である児童自立支援施設又は児童養護施設に収容される。
 少年院送致となった少年は,初等,中等,特別又は医療のいずれかの種別の少年院に収容され,少年院で矯正教育を受けつつ更生への道を歩み,仮退院が許可され出院した後には,保護観察に付される。
 このほか保護観察に付される少年としては,刑の執行を猶予されて保護観察に付された少年及び少年刑務所等で刑の執行を受け仮出獄した少年が該当する。
 なお,保護処分継続中あるいは終了後,審判に付すべき事由の存在が認められないにもかかわらず保護処分をしたことを認め得る明らかな資料を新たに発見した場合は,保護処分の決定をした家庭裁判所は,決定をもってその保護処分を取り消さなければならない。

★児童自立支援施設・児童養護施設(P.213)
 不良行為をしたり,又はするおそれのある児童等に必要な指導を行い,その自立を支援することを目的とする施設を児童自立支援施設といいます。また,保護者がいない児童,虐待されている児童等を養護し,その自立を支援することを目的とする施設を児童養護施設といいます。