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 平成15年版 犯罪白書 第2編/第4章/第3節/3 

3 各種の処遇施策

(1) 分類処遇制度

 分類処遇制度は,保護観察官の専門性を効率的に発揮し,特に資質,環境に問題の多い保護観察対象者に対して,保護観察官による計画的かつ直接的処遇を積極的に実施する施策として昭和46年に導入された制度である。分類処遇制度においては,科学的な知見に裏打ちされた一定の基準に基づき,保護観察対象者を処遇の難易度に応じてA・Bの2段階に分類し,問題が多く処遇が困難と予測されたA分類の者に対しては,保護観察官は自ら本人,家族その他の関係者と接触して直接指導助言を行い,関係機関との連絡等を積極的に行うとともに,保護司に対しても連絡,協議等を積極的かつ効率的に行うこととされている。
 2―5―3―5図は,A分類とされた者の比率について,平成元年以降の推移を見たものである。

2―5―3―5図 A分類率の推移

 仮出獄者及び保護観察付き執行猶予者のいずれにおいても,平成11年以降若干の低下の傾向が見られる。

(2) 類型別処遇制度

 類型別処遇制度は,保護観察対象者の問題性その他の特性を,犯罪・非行の態様,環境条件等により類型化した上,類型ごとに具体的な処遇指針を例示し,その特性に焦点を合わせた効率的処遇を展開することを目的とした制度であり,分類処遇とは別の角度から処遇を充実させる施策として平成2年に導入されている。平成14年12月31日現在,「覚せい剤事犯」類型には,仮出獄者の27.5%,保護観察付き執行猶予者の18.4%が,それぞれ該当しているほか,「暴力組織関係」類型には同じく3.3%と4.1%,「性犯罪」類型には同じく4.3%と4.6%が,それぞれ該当している(法務省保護局の資料による。)。
 なお,この類型別処遇制度は,施行後13年を経過し,この間,児童虐待や,いわゆるDV犯罪と呼称される配偶者からの暴力など,新たな種類の犯罪に対し法的対応がなされ,また,これらに関連した種々の研究等が様々な領域で行われるようになってきたことなど,変化が認められ,一方で,高齢対象者が増加するなど保護観察の実状に変化が認められるようになった。こうした変化を保護観察の処遇方法に反映する必要性にかんがみ,類型別処遇制度の改正について検討が加えられた結果,平成15年3月18日付で,新たな類型区分をとり入れるなどの改正がなされ,同年4月1日から実施されている。

(3) 長期刑仮出獄者に対する保護観察

 無期刑を含む,執行すべき刑期が8年以上の長期刑仮出獄者に対しては,特に保護観察の充実・強化が図られている(長期刑受刑者に対する仮出獄審理については,本章第2節3(2)参照)。
 いわゆる中間処遇制度は,上記長期刑受刑者に関し,地方委員会が相当と認め,かつ,本人の同意を得た事案について,早期に円滑な社会生活へ移行させることを目的として,仮出獄当初の1か月間,更生保護施設に居住させ,生活訓練を中心とした処遇及び職業についての援助等を行うというものである。平成14年の中間処遇実施対象者は114人である(法務省保護局の資料による。)。
 さらに,平成12年7月から,仮出獄後1年間(仮出獄の期間が1年に満たないときは,その期間)を重点的な処遇期間として,この間の保護観察官による直接的関与を強化するほか,被害者及び遺族に対する被害弁償・慰謝の措置の具体的方法について保護観察開始当初から継続的に指導・助言していくなどの処遇が実施されている。