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 平成15年版 犯罪白書 第2編/第4章/第5節 

第5節 恩赦

 恩赦には,[1]大赦(有罪の言渡しを受けた者については,その言渡しの効力を失わせ,まだ有罪の言渡しを受けない者については,公訴権を消滅させる。),[2]特赦(有罪の言渡しを受けた特定の者について,その言渡しの効力を失わせる。),[3]減刑(刑の言渡しを受けた者について,刑を減軽し,又は刑の執行を減軽するほか,刑の執行猶予中の者については,刑の減軽と合わせて猶予の期間をも短縮することができる。),[4]刑の執行の免除(刑の言渡しを受けた特定の者に対し,刑の執行を免除する。),及び[5]復権(有罪の言渡しを受けたため法令の定めるところにより資格を喪失し,又は停止された者に対し,その資格を回復させる。)の5種類がある。
 恩赦は,これを行う方法で分けると,[1]政令で罪の種類,基準日等を定め,該当する者に対して一律に行われる政令恩赦(大赦,減刑及び復権)と,[2]特定の者に対して個別的に審査した上で行われる個別恩赦(特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権)とがある。個別恩赦は,さらに,常時恩赦と特別基準恩赦とに分けられる。常時恩赦は,常時行われ,特別基準恩赦は,政令恩赦が行われる際,同恩赦の要件から漏れた者などを対象として,内閣の定める基準により,一定の期間を限って行われる場合が多いが,時には,政令恩赦と関係なく単独で行われた例もある。
 恩赦の効力は,政令恩赦の場合,政令の施行日に効力が発生する。個別恩赦の場合には,まず,2―5―5―1表に掲げた者が中央更生保護審査会に恩赦の上申をする。これを受けた同審査会が審査を行い,恩赦を相当とした場合には,法務大臣に恩赦の申出を行い,法務大臣は閣議を請議し,内閣が恩赦を決定し,次いで天皇の認証を受け,恩赦が効力を生ずる。
 2―5―5―1表は,常時恩赦について,平成14年に閣議において恩赦決定となった者を,上申者別及び種類別に見たものである。刑の執行の免除が21人,復権が75人となっている。
 刑の執行の免除は,主として無期刑の仮出獄者について,更生したと認められる場合に保護観察を終了させる措置としてとられており,復権は,既に更生したと認められる者が,前科のあることにより資格が制限されるなど社会的活動の障害となっている場合に,法令の定めるところにより喪失し又は停止されている資格を回復させるものである。この刑の執行の免除及び復権は,いずれも,これらの者の社会復帰を一層促進する刑事政策的役割を果たしている。

2―5―5―1表 常時恩赦の上申者・種類別決定人員