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 平成15年版 犯罪白書 第1編/第1章/第1節/4 

4 特異な類型の刑法犯の動向等

 本項においては,刑法犯のうち,社会一般の注目を集めることが多い類型の刑法犯の動向を見ることとする。

(1) 殺人関係

 1―1―1―12表は,最近10年間における保険金殺人の検挙件数を見たものであるが,平成10年以降,増加が続いている。

1―1―1―12表 保険金殺人の検挙件数

 1―1―1―13表は,通り魔殺人事件(人の自由に出入りできる場所において,確たる動機がなく通りすがりに不特定の者に対し,凶器を使用するなどして,殺傷等の危害を加える事件をいう。)の認知件数,検挙件数の推移を,最近10年間について見たものである。

1―1―1―13表 通り魔殺人事件の認知件数・検挙件数

(2) 略取・誘拐関係

 1―1―1―14表は,略取・誘拐事件の中でも悪質と考えられるもの,すなわち身の代金目的の略取・誘拐事件と13歳未満の年少者を対象とする略取・誘拐事件について,最近10年間における認知件数,検挙件数,検挙率の推移を見たものである。
 身の代金目的の略取・誘拐の認知件数は,平成10年以前はひと桁であったが,11年以降は10件以上が続いている。また,検挙率については,身の代金目的略取・誘拐,年少者略取・誘拐ともに,高い水準で安定している。

1―1―1―14表 身の代金目的の略取・誘拐及び年少者略取・誘拐の動向

(3) 強盗関係

 1―1―1―15表は,現金輸送車強盗,金融機関強盗,深夜スーパーマーケット強盗について,最近10年間における認知件数,検挙件数,検挙率の推移を見たものである。現金輸送車強盗の認知件数は,平成9年を除くと10件前後で推移しており,大きな変動はない。深夜スーパーマーケット強盗の認知件数は,10年以降,300件を超える状態が続いており,それ以前に比べて増加している。
 平成14年は,強盗一般について,検挙率の低下傾向に歯止めがかかったのが特徴であるが,これらの事犯の検挙率も,前年に比べて大幅に向上している。

1―1―1―15表 現金輸送車強盗・金融機関強盗及び深夜スーパーマーケット強盗の動向

(4) カード犯罪

 1―1―1―16表は,クレジットカード,キャッシュカード,消費者金融カード等を悪用したカード犯罪について,最近10年間における認知件数,検挙件数,検挙率の推移を見たものである。
 平成14年に検挙された3,521件のカード犯罪について,どのようなカードが使用されたかを見ると,窃取・拾得したカードを使用したものが1,946件(55.3%),偽造カードを使用したものが769件(21.8%),その他が806件(22.9%)となっており,偽造カードを使用した事案は前年に比べて191件の増加を示している(警察庁刑事局の資料による。)。
 クレジットカード等の支払用カードについては,電子機器を使用してカード上の電磁的情報を不正に取得(いわゆるスキミング)した上,これを用いて作った不正カードを悪用するなどの手口が横行したため,平成13年6月の刑法の一部改正(同年7月施行)により,支払用カード電磁的記録に関する罪が新設された。これにより,支払用及び預貯金引出用のカードを構成する電磁的記録の不正作出・供用が従来より重く処罰されることとなったほか,不正の電磁的記録を搭載したカードの譲渡,貸与,輸入又は所持,カードの電磁的情報の不正取得等の行為が,新たに処罰されることとなった。平成14年における支払用カード電磁的記録に関する罪の認知件数は287件,検挙件数は277件,検挙人員は148人であり,今後の動向が注目される(警察庁の統計による。)。

1―1―1―16表 カード犯罪の認知件数・検挙件数・検挙率

(5) 児童虐待

 児童虐待については,平成12年5月に児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号)が成立し,同年11月に施行された。同法には,独自の罰則規定は置かれていないが,何人も児童に対して虐待をしてはならないこと,また,児童虐待に係る犯罪については,親権者であることを理由に責任を免れるものではないこと等が明記された。
 1―1―1―17表は,児童虐待に係る事件の検挙件数・検挙人員の推移を罪名別に見たものであり,平成14年の検挙件数は172件,検挙人員は184人となっている。
 1―1―1―18表は,平成14年の検挙人員184人について,被害者との関係別にその内訳を見たものである。検挙人員全体で見ると,父親等が116人で6割を超えているが,児童の生命や安全に直結する殺人,傷害致死,保護責任者遺棄については,母親等の方が多く,また,実父と実母を比較すると,実母の方が多くなっている。

1―1―1―17表 児童虐待に係る事件の検挙件数・検挙人員

1―1―1―18表 児童虐待事件における加害者と被害者との関係

(6) 組織的犯罪

 組織的犯罪処罰法は,殺人その他所定の刑法犯が,[1]団体の活動として,そのための組織により行われた場合,又は,[2]団体に不正な権益を得させる目的等で実行された場合,その処罰を加重することとしている。また,同法は,犯罪収益の仮装,隠匿等のいわゆるマネー・ローンダリングを一定の要件の下で処罰することとしたほか,犯人から犯罪収益を剥奪するための規定を置いている。同法は平成12年2月から施行されており,同法違反による検察庁新規受理人員の推移は1―1―1―19表のとおりである。

1―1―1―19表 組織的犯罪処罰法に係る検察庁新規受理人員


★刑法犯(P3)
 [1]刑法の定める犯罪のほか,[2]他の法律に定められていても,これと共通の性格を持つ犯罪を含めて「刑法犯」と呼んでいます。
 例えば,盗犯等防止法は,一定の要件を満たす窃盗を,常習累犯窃盗として重く処罰していますが,犯罪そのものの性質は,刑法の窃盗罪と共通ですので,犯罪白書では,刑法犯に含めています。
 刑法犯の正確な範囲については,凡例を参照してください。

★特別法犯(P20)
 刑法犯以外の犯罪をいいます。例えば,道路交通法違反,覚せい剤取締法違反などは特別法犯です。

★一般刑法犯(P3)
 刑法犯全体から交通関係業過を除いたものをいいます。

★交通関係業過(P3)
 交通事故によって人を死傷させた場合,過失があれば,刑法第211条の業務上過失致死傷罪又は重過失致死傷罪が成立しますが,これを交通関係業過と呼んでいます。交通関係業過は過失犯であり,治安に与える影響も,殺人や窃盗などとは異なるので,犯罪白書では,必要に応じて,刑法犯を,交通関係業過と一般刑法犯に分けて分析しています。なお,平成13年の刑法改正によって新設された危険運転致死傷罪(刑法第208条の2)については,交通関係業過ではなく,一般刑法犯に含めています。
 交通関係業過の正確な範囲については,凡例を参照してください。

★認知件数(P3)
 警察などの捜査機関が認知した事件の数をいいます。

★発生率(P3)
 人口10万人当たりの認知件数をいいます。

★検挙件数(P3)
 警察などの捜査機関が検挙した事件の数をいい,検察官に送致・送付した件数のほか,微罪処分にした件数等も含みます。

★検挙率(P3)
 検挙件数÷認知件数をパーセンテージで表したものです。

★検挙人員(P3)
 警察などが検挙した被疑者の人数をいいます。