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 平成14年版 犯罪白書 第5編/第2章/第4節/1 

第4節 犯罪者の属性から見た動向

1 年齢層から見た動向

(1) 年齢層別の検挙人員

 5-2-4-1図は,殺人及び暴力的9罪種について,年齢層別検挙人員を成人と少年に分けて,その推移を見たものである。成人,少年別に各罪種を比較すると,強盗及び恐喝において少年が占める比率が他の罪種よりも高くなっている。年齢層別に見ると,殺人,脅迫,強姦及び強制わいせつを除いた罪種で10歳代が多いのが特徴である。20歳代に多い罪種は,強姦及び強制わいせつである。また,50歳代,60歳以上の年齢層に関しては,すべての罪種において増加を示しており,中でも強盗は,昭和49年と平成13年を比較すると50歳代で12.7倍,60歳以上で18.6倍に増加しているほか,強制わいせつの増加も著しい。強盗,傷害などにおける50歳以上の増加は,最近の数年間に著しくなっており,高齢者層を取り巻く環境が大きく変化しているのではないかと推測される。

5-2-4-1図 罪種・年齢層別検挙人員の推移

(2) 年齢層別検挙人員人口比(発生率)

 これらの年齢層別増減傾向は,少子高齢化や団塊の世代に代表される人口構成比のアンバランスに起因している可能性がある。そこで,この人口のアンバランスを補正するため,各年齢層別の人口10万人当たりの検挙人員(以下,「犯罪発生率」という。)を見たものが5-2-4-2図である。

5-2-4-2図 罪種・年齢層別検挙人員人口比の推移

 殺人及び暴力的9罪種を概観すると,前述のとおり検挙人員が増加した50歳代及び60歳以上の層は,犯罪発生率でもおおむね上昇傾向にあり,特にここ数年の上昇傾向が目立っている。したがって,50歳代以上の検挙人員の増加は,団塊の世代としての人口が多いだけではなく,実数においても人口比である犯罪発生率においても増加していることが指摘され,殺人や暴力的9罪種では,高齢化が進行しているものと考えられる。

(3) 少年の動向

 少年の年齢層別犯罪発生率をみると,近年,殺人,脅迫,強姦,強制わいせつを除く罪種において成人の各年齢層を上回っていることが指摘される。
 少年の年齢層別で見ると,年齢が高くなれば,おおむね犯罪発生率が下がるのが少年非行の特徴であるが,殺人及び暴力的9罪種に関しては,かなり異なる様相を示している。
 平成13年を見ると,年少少年の犯罪発生率が高い罪種は,殺人及び暴力的9罪種のうち,6罪種(傷害,暴行,脅迫,恐喝,住居侵入及び器物損壊)である。これに対して,中間少年の犯罪発生率が高いのは,強盗,強制わいせつの2罪種,年長少年は殺人,強姦の2罪種である。