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 平成14年版 犯罪白書 第1編/第2章/第2節/3 

3 来日外国人犯罪者の処遇

(1) 検察庁における処理状況

 1-2-2-4表は,最近3年間における来日外国人被疑事件の国籍等別検察庁新規受理人員を見たものである。3年間を通じて最も多いのは中国であり,アジア地域の国籍等の者が8割以上と大部分を占めている。

1-2-2-4表 来日外国人被疑事件の国籍等別検察庁新規受理人員

 1-2-2-5図は,最近10年間の検察庁における外国人被疑事件の終局処理人員(交通関係業過及び道交違反を除く。以下,本項において同じ。)の推移を見たものである。(巻末資料1-10参照)。起訴人員は,増加傾向が著しく,13年は前年より2,390人増加し,1万5,152人となっている。

1-2-2-5図 外国人被疑事件の検察庁終局処理人員の推移

 1-2-2-6表は,最近3年間の検察庁における来日外国人被疑事件の罪名別終局処理人員を示したものである。

1-2-2-6表 来日外国人被疑事件の罪名別検察庁終局処理人員

 平成13年における来日外国人被疑事件の終局処理人員は1万8,849人であり,これは検察庁終局処理人員の4.7%,外国人被疑事件終局処理人員の76.3%を占めている。
 罪名別に見ると,刑法犯では,窃盗(57.2%)が最も多く,次いで傷害(10.4%),強盗(5.1%),横領(4.2%)の順になっている。特別法犯では,入管法違反(77.4%)が最も多く,次いで覚せい剤取締法違反(7.3%),大麻取締法違反(1.8%),麻薬取締法違反(1.5%)の順で,あへん法違反を加えた薬物事犯が約1割を占めている。
 1-2-2-7表は,平成13年における来日外国人被疑事件の検察庁終局処理状況を,全事件の処理状況との対比で見たものである。

1-2-2-7表 来日外国人被疑事件の検察庁終局処理状況及び起訴・起訴猶予率

 起訴率について,来日外国人と全終局処理人員を比べると,来日外国人の起訴率が高い罪名は,刑法犯では,文書偽造,殺人,窃盗,強盗等で,特別法犯では,あへん法違反等である。
 また,来日外国人の起訴率が低い罪名は,刑法犯では,有価証券偽造等であり,特別法犯では,売春防止法違反等である。

(2) 裁判所における処理状況

 1-2-2-8図は,最近10年間について,通常第一審における有罪人員に占める外国人事件比(有罪人員総数に占める外国人有罪人員の比率をいう。以下,本項において同じ。)の推移を見たものである。外国人有罪人員は,平成4年以降増加を続け,9年の8,473人をピークとして,その後は減少傾向を示し,12年は7,740人となったが,13年は増加に転じ9,396人となっている。

1-2-2-8図 通常第一審における有罪人員・外国人事件比の推移

 外国人事件比を見ると,外国人有罪人員の動きと同様に,平成9年をピークとして10年以降低下傾向を示しており,12年は,有罪人員総数の伸びを背景に,ピーク時の9年(12.9%)と比べ3.0ポイント低下して9.9%となったが,13年は11.6%と,前年に比べて1.7ポイント高くなっている。
 通常第一審における通訳・翻訳人の付いた外国人被告人の言語別終局人員の構成比を見ると,平成12年(総数6,329人)は,中国語38.8%,韓国・朝鮮語15.6%,タガログ語6.8%,ペルシャ語6.4%,タイ語6.2%,ポルトガル語5.3%,スペイン語4.7%等となっており,通訳言語の総数は36言語に及んでいる(最高裁判所事務総局の資料による。)。
 1-2-2-9図は,最近5年間の通常第一審における通訳・翻訳人の付いた外国人被告人の刑期別構成比の推移を見たものである。

1-2-2-9図 通常第一審における通訳・翻訳人の付いた外国人事件の刑期別構成比の推移

 刑期が1年以上(2年未満)の者の占める比率を見ると,平成10年に50%を割り込み,12年には42.2%まで低下したが,13年は47.8%と増加した。