第9節 ニュー・ジーランド
1 犯罪被害者施策の沿革 ニュー・ジーランドは,1963年に,犯罪被害者補償法(Criminallnjuries Compensation Act1963)を制定し,世界で最初に犯罪被害者に対する経済的補償制度を導入した。その後,交通災害や労働災害等の被害者の救済を目的とした国家災害補償制度が導入され,犯罪被害も災害の一つという考え方から,犯罪被害者補償法による補償は,1974年に国家災害補償制度に統合されて,労働災害等と同様の扱いで補償されるようになった。刑事裁判においては,1985年刑事裁判法(Criminal Justice Act 1985)により賠償命令(reparationorder)が導入され,1987年には,犯罪被害者法(Victimsof Offences Act1987)が制定され,犯罪被害者の権利(犯罪被害からの回復及び刑事司法にかかわる権利)が明示された。また,1989年児童,青少年及び家族法(Children,Young Persons,and The ir Fami11es Act1989)では,少年に対する修復的司法策として少年審判に代わるファミリー ・グループ・カンファレンスが導入され,加害者,被害者及び地域の代表者による非行解決の方法が採用された。このファミリー・グループ・カンファレンスに代表されるように,ニュー・ジーランド刑事司法の特徴の一つは,イギリスから持ち込まれた適正手続を原則とする刑事司法とマオリ族等の先住民族の修復的問題解決法との融合の試みにある。
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