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 平成11年版 犯罪白書 第5編/第7章/第5節/3 

3 被害者補償制度等

 1977年に導入された国による犯罪被害者補償制度は,数次の改正により拡充されてきている。現在の制度では,身体的被害,財産的被害のいずれも国家補償の対象とされており,犯罪被害者補償委員会(Commission d ’ Indemnisation des Victimes d ’ Infractions,CIVI)の決定により,犯罪被害者補償基金が支払を行う。死亡や重い障害による1か月以上の労働不能,強姦又は強制わいせつによる精神的損害を含む損害に対しては,被害者の経済的事情等に関係なく,犯罪被害者補償基金から限度額なしの補償を受けることが可能である。一方,1か月未満の労働不能及び財産上の被害については,他の損害補てんの手段がなく,被害者が経済的困窮状態にある場合に限って,限度額の範囲内で補償される。いずれの場合も,被害者の当座の必要を満たすために,仮払いの決定をすることができる。
 V-89表は,犯罪被害者補償委員会の補償決定件数等の推移を見たものである。1997年の棄却等を含む決定件数に対する認可件数の比率を見ると,身体的被害については,終局決定で83.2%,仮払い決定で76.5%,また,財産的被害については,終局決定で50.0%,仮払い決定で40.4%となっている。
 V-49図は,犯罪被害者補償委員会の補償請求受理件数及び補償金認可金額の推移を見たものである。

V-89表 犯罪被害者補償委員会の決定状況

V-49図 犯罪被害者補償委員会による補償請求受理件数・補償金の推移

 その他の経済的援助としては,私訴原告人は,一定の要件の下で法律扶助(aide juridictionne11e)を受けることができるとされている。また,被告人が懲役に処された場合において,私訴原告人が賠償を命ずる判決を得ている場合は,作業賞与金の一部が私訴原告人に対する損害賠償に充当される。