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3 被害者補償制度等 イギリスにおける犯罪被害者補償は,1964年に制度が発足して以来,補償対象を拡大する方向で制度改革が続けられており,現行制度は,1995年犯罪被害補償法(Criminal InjuryCompensation Act1995)に基づくものである。ただし,現行制度は,1996年4月1日以降に申請のあったものについて有効であり,それ以前に申請のあったものについては旧制度の適用を受ける。この制度は,暴力犯罪の被害者に対して,本来であれば加害者に対する民事訴訟で得られるであろう補償を,国が恩恵として肩代わりする制度として設立されたもので,補償の対象となるのは,被害者本人の場合は,身体的・精神的な傷害,失業又は休業中の補償及び医療費であり,被害者遺族の場合は,見舞い金,扶養家族に対する収入補償及び葬儀費用である。身体的傷害の補償に対して,従来の制度では,個別事例ごとに傷害の程度が審査されていたのに対して,現在の制度では,傷害のレベルを25段階に分け,傷害部位及び程度によって自動的に傷害レベルと補償金額を定めることで,審査の透明性と効率性を図ったことが特徴となっている。また,制限付きながら,現行制度では,家庭内暴力の被害及び強度の不安等の精神的被害も補償の対象となっている。補償金額は,傷害のレベルによって1,000ポンドから25万ポンドまでに分類され,すべての補償の合計が50万ポンドを超えない範囲で支払われる。被害者としての刑事司法機関に協力する義務を怠ったり,ほかの制度から補償を受けている場合には,補償を受けられなかったり,補償額が減額されることがある。
補償は,被害者又はその代理人が犯罪被害補償局(Criminal InjuriesCompensation Authority)に申請することによって,審査官による審査が行われ,通常12か月以内に審理が終了し,申請者に補償の可否及び補償金額が通知される。この決定に対して不服がある場合には,さらに上位の審査官による審査が行われ,それでもなお不服がある場合には,犯罪被害補償不服審査会(Criminal Injuries Compensation Appeals Panel)の審査を求めることができる。V-44図は申請受理から第一次の結果が出るまでの期間を示したものであるが,88.4%が12か月以内に処理され第一次決定に至っている。 また,V-45図は,最も重大な傷害部位について補償給付額を見たものであるが,2,000ポンド未満の比率が最も高く過半数を超えている。 V-44図 申請受理から第一次決定までの期間別構成比 V-45図 補償給付金額別構成比 |