第3節 連合王国
1 犯罪被害者施策の沿革 イギリスにおける犯罪被害者援護は,1964年に導入された犯罪被害者補償制度に始まる。この制度は,暴力犯罪の被害者に対して経済的援助を行うもので,本来であれば加害者に対する民事訴訟で得られるであろう補償を,国が恩恵として肩代わりする制度として設立されたものである。1970年代に入り,経済的な補償に加えて,民間ボランティアの犯罪被害者援護協会(Victi InSupport)による犯罪被害者に対する精神的・実際的な支援が始まった。1980年代には,刑事手続に対する被害者の意識調査等が行われ,刑事手続における被害者保護,特に刑事司法機関による被害者に対する情報提供の必要性が次第に認識されるようになった。こうした動きを受けて,1990年には,刑事司法における犯罪被害者援護の基準と被害者の基本的権利を示した政府の宣言としての被害者憲章(VictimsCharter)が発表され,1996年には,各刑事司法機関から被害者が受けることのできる具体的なサービスを記した新被害者憲章が発表された。 イギリスにおける被害者援護は,これら政府による経済的支援,ボランティア団体による個別的・実際的な援助,刑事司法機関による被害者保護が,それぞれの支援内容を充実させながら,かつ,それぞれの支援活動を有機的に連動させながら発展してきている。
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