第4章 犯罪被害の回復等の実態
第1節 概 説 犯罪により被害者及びその遺族等が被る被害は,生命・身体的被害,精神的被害,経済的被害等と多岐にわたる。 法務総合研究所では,法務省刑事局が,全国の地方検察庁の協力を得て実施した「犯罪被害の実態調査」の結果に基づき,「財産犯」については被害額及び被害回復状況並びにこれらと処分(裁判所の判決を含む。以下,本章において同じ。)内容との関係等につき,「生命・身体犯」,「過失犯」,「性犯罪」及び「その他の犯罪」については示談状況及びこれと処分内容との関係等につき,それぞれ分析したので,その結果を紹介する。 上記実態調査は,平成9年6月1日から同月30日までの間に,全国の地方検察庁本庁(本庁管内の区検察庁を含む。)に対応する裁判所において,有罪判決の言渡しがなされた事件並びに地方検察庁本庁において略式命令請求及び不起訴処分(ただし,不起訴処分の理由を起訴猶予,親告罪の告訴の取消し又は心神喪失とするものに限る。)がなされた事件(ただし,交通関係業過事件については,100件につき2件を無作為に抽出した。)合計3,552件を対象として,事件記録に基づいて行った調査である。本章では,そのうち,財産上の被害がなかったもの及び被害額が算定できないものを除く財産犯2,009件,生命・身体犯882件,過失犯265件,性犯罪141件及びその他の犯罪75件の合計3,372件を分析の対象とした。 なお,本章では,窃盗,不動産侵奪,強盗,詐欺,恐喝,遺失物等横領を含む横領,毀棄(器物損壊等及び建造物損壊)及び放火を「財産犯」,殺人,傷害,暴行及び逮捕監禁を「生命・身体犯」,業務上過失致死傷及び過失致死を「過失犯」(その大部分が交通関係業過),強姦及び強制わいせつを「性犯罪」,脅迫及び業務妨害を「その他の犯罪」とした。
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