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 平成11年版 犯罪白書 第5編/第3章/第2節/6 

6 捜査・刑事裁判に関する認識等

 (1)捜査協力の負担
 V-30表は,事件の捜査に対する協力に負担を感じたかについて,V-31表は,負担に感じた内容について,それぞれ尋ねた結果を罪種別に見たものである。
 全体では,捜査協力に負担を感じなかったものの比率が約38%であるのに対し,負担を感じたものの比率は約34%である。罪種別では,強盗,強姦及び強制わいせつで,負担を感じたものの比率が,いずれもほぼ50%と高くなっている。

V-29表 報道の受け止め方

 負担に感じた内容について,全体では,「時間的拘束が大きかった」(約17%)とするものの比率が最も高く,次いで「警察と検察庁で,同じことを聞かれた」(約15%),「呼び出しの回数が多かった」(約13%)の順となっている。一方,「被害者(遺族)としての悲しみや苦しみをわかっていないと感じた」,「呼び出される際,自分の都合に対する配慮が足りなかった」,被害者に「落ち度があるようなことを言われた」,「しつこく聞いてきた」,被害者側の「言い分を聞こうとしなかった」,「他人に知られないような配慮が足りなかった」の比率は,いずれも10%未満である。罪種別では,「時間的拘束が大きかった」とするものの比率は,強盗及び強制わいせつで高く,それぞれ30%を超えている。「警察と検察庁で,同じことを聞かれた」の比率は,強盗,強姦及び強制わいせつで高く,30%前後となっている。「呼び出しの回数が多かった」の比率は,恐喝,強姦及び強制わいせつで高く,20%を超えている。このほかにほぼ20%以上の比率を示すものとしては,「被害者(遺族)としての悲しみや苦しみをわかっていないと感じた」の比率が,殺人等で約23%,強姦で約20%となっている。

V-30表 捜査協力の負担

V-31表 捜査協力の負担を感じた内容

 なお,捜査協力への負担に関する「その他」の記載内容は多岐にわたっているが,「事件のことを思い出して苦痛だった」,「事件直後でけがなどが痛むのに何時間も事情聴取をされた」,「プライベートなことまで調べられた」などとするものが見られた。
 このほか,強姦及び強制わいせつの被害者で,「女性の気持ちをわかっていないと感じた」とするものの比率は,それぞれ約24%,約7%,「性に関することを聞かれて苦痛だった」とするものの比率は,それぞれ約31%,約14%である。また,「担当者が男性だった」ため負担に感じたとする被害者が,強姦で約16%,強制わいせつで約14%となっているほか,「担当者が女性だった」ため負担に感じたとする被害者も,強姦で約3%となっている。
 性犯罪の捜査の過程で女性が担当していたとするものの比率は,事情聴取では,強姦で約42%,強制わいせつで約24%で,現場などで被害状況を説明する際の立会い(以下,本項において「現場説明」という。)では,それぞれ約51%,約25%である。実際に女性が性犯罪の捜査を担当していた場合において,女性に担当してもらってよかったとする被害者の比率は,強姦で事情聴取,現場説明共に,50%台であり,強制わいせつでは,事情聴取で約75%,現場説明で約62%である。これに対し,実際には女性が担当していなかった場合において,女性に担当してほしかったとする被害者の比率も,強姦で事情聴取,現場説明共に,50%前後,強制わいせつでは事情聴取で約52%,現場説明で約34%である。また,「その他」に女性に担当してもらいたいものとして,婦人科の医師による診察を記載するものがあった。
 (2)証人出廷の負担
 証人として出廷したと回答した被害者等は169人であり,その被害者等(無回答1人を含む。)に対して,証人出廷に負担を感じたかとその負担の内容について尋ねた結果を罪種別に見たものが,V-32表である。全体では,証人として出廷することに負担を感じたとするものが約46%で,負担を感じなかったとするものの比率(約38%)を上回っている。罪種別では,負担を感じたとするものの比率は,強姦及び強制わいせつで,いずれも80%を超えているほか,強盗で約72%と高くなっている。
 負担に感じた内容について,全体では,「被告人がいるところでは証言しづらかった」とするものの比率が最も高く,次いで「被害者(遺族)としての悲しみや苦しみをわかっていないと感じた」,「警察や検察庁で聞かれたことと同じことを聞かれた」,「傍聴人がいるところでは証言しづらかった」の順となっている。罪種別では,「被告人がいるところでは証言しづらかった」とするものの比率は,強制わいせつ(約67%)及び強姦(約55%)で最も高くなっており,また,「傍聴人がいるところでは証言しづらかった」の比率も,強姦で約27%を占め,最も高くなっている。また,「被害者(遺族)としての悲しみや苦しみをわかっていないと感じた」の比率は,業過致死で比較的高く(約24%)なっている。

V-32表 証人出廷の負担

 このほか,強姦及び強制わいせつの被害者で,「女性の気持ちをわかっていないと感じた」とするものの比率は,それぞれ約9%,約17%,「性に関することを聞かれて苦痛だった」とするものの比率は,それぞれ約36%,約17%である。
 (3)刑事裁判を傍聴した際の感想
 裁判を傍聴した被害者等は,全体で200人(約19%)であり,罪種別に,回答者数に占める比率を見ると,殺人等が約66%と最も高く,次いで業過致死の約40%,傷害等の約19%の順となっている。
 V-33表は,裁判を傍聴した被害者等に対し,傍聴した際に不満が残ったかとその不満の内容について尋ねた結果を,罪種別に見たものである。不満が残った被害者等は,全体で146人(約74%)であり,罪種別では,殺人等及び業過致死で比率が高く,共に80%を超えている。
 不満が残った内容について,全体では,「加害者に反省の態度がみられなかった」とするものの比率が最も高く,次いで「被害者(遺族)の気持ちが考慮されていない」,被害者側の「言い分が反映されていない」の順となっている。これを罪種別に見ると,強制わいせつを除くすべての罪種で「加害者に反省の態度がみられなかった」とするものの比率が最も高く,特に殺人等,業過致死,傷害等及び窃盗では60%を超えている。一方,「被害者(遺族)の気持ちが考慮されていない」の比率は,殺人等,業過致死及び強姦で40%を超え,被害者側の「言い分が反映されていない」の比率は,殺人等及び業過致死で30%台を占め,他の罪種と比べて高くなっている。

V-33表 裁判傍聴の不満