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 昭和38年版 犯罪白書 第三編/第一章/二/3 

3 犯罪の集団化

 少年犯罪の集団化の現象を,共犯事件数率を指標として考察すると,最近五年間の傾向はIII-4表に示すように,波状の起伏はあるが一般的にみて,おおむね増加の傾向にあるといえよう。すなわち全少年刑法犯検挙件数のなかで,少年相互の共犯事件数の占める比率は,昭和三二年には二四・七%であったものが,昭和三六年には二六・三%と増加している。少年共犯事件数率は終戦直後には,きわめでわずかであったことを考えると,最近の急激な増加は目をみはるべきものがあり,しかもその勢いが依然として保たれていることは,なおこれが少年犯罪の特色の一つであることを示しているものとみるべきであろう。

III-4表 主要罪名別刑法犯の共犯事件数の率(昭和32〜36年)

 少年犯罪と対照するために,成人相互の共犯事件数率を算出してみると,III-4表にみるように,最近五年間に成人相互の共犯事件数率は明らかに減少傾向にあり,昭和三六年にはわずか一一・六%であるにすぎない。この対照的な事実によっても,犯罪の集団化の傾向が,少年のみにみられる特色であることが裏書きされよう。
 このように少年犯罪の集団化の傾向は,一般的にみて注目すべき様相を呈しているが,これをさらに主要な罪種別に検討してみると,前掲の表に示すように,昭和三六年において最も高い共犯事件数率を示しているものは,強盗の四四・〇%で,強かん,恐かつ,傷害,窃盗がこれに次ぎ,いずれも平均値を上まわった率をみせている。一方成人の場合は,恐かつの三二・六%が最も多く,強盗,傷害などの順になっている。少年相互と成人相互の共犯事件数率の差が著しい罪種は,強かん二四・八%,強盗一七・八%,窃盗一六・四%などで,これらの罪種が少年共犯事件の特色であることを物語っている。このような傾向は,最近五年間においても,ほぼ恒常的にみられるところであるが,昭和三六年にはとくに少年の窃盗および傷害が,五年間を通じて最高の,また暴行および恐かつが同じく最低の共犯事件数率を示していることが注目される。
 以上は,少年相互または成人相互の共犯事件についての考察であるが,少年犯罪の集団化の傾向をみるのに欠くことのできない事柄は,成人と少年との共犯事件についての分析である。とくに最近は,成人が少年を共犯者に抱き込むばかりでなく,統計的にはあきらかではないが,むしろ逆に,少年が成人を共犯者として使用し,犯罪の主要な役割を少年が演ずる事犯も少なからず見受けられると思われるため,成人と少年との共犯事件数の現況と推移を検討してみると,昭和三六年にはこのような事件は,総数で二四,七九〇件検挙されている。これは全刑法犯検挙事件数の二・四%にあたる。罪種別では強盗,強かんなどの率が高く,少年共犯事件と似た傾向をみせているが,これは成人といっても二〇才をこえたばかりの青年が,主として少年と共犯事件をおかすという事情によるものと思われる。最近五年間の推移は,共犯事件数率としてはIII-4表にみられるように,おおむね二・三-二・五%の間を波状に上下しているが,事件数の点からみると,昭和三二年に二二,五二二件であったものが,年々増加し,五年間に二,二〇〇件以上増加したこととなっている。とくに粗暴犯の増加が顕著であることが注目される。