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 昭和38年版 犯罪白書  

はしがき

 ここに,昭和三八年度版の「犯罪白書」をおくる。
 今より三年前,わが法務総合研究所がはじめて「犯罪白書」を発表して以来,犯罪とその対策に関する刑事政策的研究が,とみに世の認識と理解とを得つつあるように見受けられることは,われわれにとって,何よりのはげましでなければならない。ところで年々の犯罪情勢およびこれをめぐる諸施策を記述するにあたって,少しずつスポットライトのあて方を変えてみようという方針に従い,本年は,わが国における「犯罪と犯罪者処遇の概観」について解明を試みることにねらいをおいた。すなわち,全体を四編にわかち,第一編総論においては,前年度の「犯罪白書」を受けて犯罪を総体的に概観しつつ,交通犯罪,公務員犯罪,選挙犯罪,外国人犯罪を特殊犯罪として個別にとりまとめ,とくに少年犯罪と麻薬犯罪の傾向とその対策について第三編および第四編の二編をあてて詳述するとともに,第二編において犯罪の捜査,検察,裁判,矯正,保護の各段階の過程を通じて犯罪と犯罪者処遇の概観を試みたことは,一つの特色をなすであろう。
 なお,本書は,その提供する資料が最新の正確なものであるべきことを生命とするのであるが,諸種の統計入手の関係で,中心をなすものは昭和三六年度までの統計となった。
 終りに,毎年の例ながら,本書の成るにあたって法務省各部局の協力を得たことを感謝し,あわせて,本書の内容に関する責任はもっぱら当研究所にあることを明らかにしておきたい。
昭和三八年四月
天野 武一 法務総合研究所長