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 平成10年版 犯罪白書 第3編/第7章/第6節 

第6節 我が国との比較

 本節においては,刑法犯等主要な犯罪(我が国では,交通関係業過を除く刑法犯,アメリカでは,指標犯罪(殺人,強姦,強盗,傷害,不法行為目的侵入,窃盗,自動車盗及び放火),イギリスでは,交通犯罪(無謀運転による過失致死等を除く。)を除く正式起訴犯罪ドイツでは,交通犯罪及び国家保護犯罪を除く刑法犯,フランスでは,交通犯罪を除く重罪及び軽罪,韓国では,刑法犯をいう。)並びに凶悪犯である殺人及び強盗について,1987年から1996年までの10年間における青年・少年の各人口比の推移を,我が国とアメリカ,イギリス,ドイツ(なお,1991年からは,旧ドイツ民主共和国に相当する地域で発生した犯罪を含んでいる。)フランス及び韓国の6か国で比較する。もとより,これら各国においては,各罪種の犯罪構成要件や少年年齢を異にし,また,統計の取り方も同一でないため,単純に各罪種の数値の多少を比較して,各国の少年非行の動向を論じることは必ずしも適当とはいえない。そこで,刑法犯等主要な犯罪並びに凶悪犯である殺人及び強盗について,各国における人口比の推移を見ることにより,その動向を比較検討することとした。
 なお,本節において,「少年」は,18歳未満(ただし,イギリスは,1992年以前は,17歳未満)の者(ただし,アメリカ及びイギリスは,10歳未満の者を除く。),「少年人口比」は,10歳以上18歳未満(ただし,イギリスは,1992年以前は,17歳未満)の人口10万人当たりの検挙人員の比率,「青年」は,18歳以上21歳未満(ただし,我が国及び韓国は20歳未満)の者(ただし,フランスは18歳以上の者をすべて「成人」とする。),「青年人口比」は,各年齢層人口10万人当たりの検挙人員の比率である。
 III-52表は,我が国の交通関係業過を除く刑法犯及び特定5罪種について,1987年から1996牢までの検挙人員総数,少年,青年及び成人別検挙人員並びに少年,青年及び成人の各人口比を見たものであり,III-131図は刑法 犯等主要な犯罪について,III-132図は殺人について,また,III-133図は強盗について,それぞれ各国の1987年から1996年までの少年人口比及び青年人口比を批較したものである。

III-52表 刑法犯及び特定罪種別検挙人員・人口比日本(1987年〜1996年)

III-131図 主要な犯罪の検挙人員人口の推移(1987年〜1996年)

III-132図 殺人の検挙人員人口髭の推移(1987年〜1996年)

III-133図 強盗の検挙人員人口比の推移(1987年〜1996年)

 刑法犯等主要な犯罪について,各年齢層ごとの人口比を,比率の高いものから順に見ると,我が国においては,いずれの年次においても,少年,青年,成人の順となっているのに対し,アメリカ,イギリス及びドイツは,いずれの年次においても,青年,少年,成人の順となっており,'フランスは,成人,少年の順であったが,1991年以降は1993年を除き,少年,成人の順となっている。また,韓国は,青年,成人,少年の順であったが,1991年以降,成人,青年,少年の順となっている。
 刑法犯等主要な犯罪について,各国の少年人口比の推移を見ると,我が国においては,低下傾向にあったが,1993年からおおむね上昇する傾向にあり,ドイツは1992年から,フランスは1994年から,韓国は1993年から,それぞれ上昇している。これに対し,アメリカ及びイギリスは,1995年から低下している。
 刑法犯等主要な犯罪について,各国の青年人口此の推移を見ると,我が国においては,1990年からおおむね上昇する傾向にあり,ドイツは,最近10年間上昇傾向にある、韓国は,1993年から上昇している。これに対し,アメリカは,最近10年間横ばいないし低下傾向にあり,イギリスは,上昇傾向にあったが,1992年からは横ばい傾向にある。
 次に,殺人について,各年齢層ごとの人口比を,比率の高いものから順に見ると,我が国においては,1989年を除き,いずれの年次においても,成人,青年,少年の順となっている。これに対し,アメリカは,青年,成人,少年の願であったが,1989年以降少年が成人を上回って,青年,少年,成人の順となっている、イギリス及びドイツは,いずれの年次においても,青年,成人,少年の順となっており,フランスは,いずれの年次においても,成人,少年の順となっている、また,韓国は,青年,成人,少年の順であったが,1994年以降,成人が青年を上回って,成人,青年,少年の順となっている。
 殺人について,各国の少年人口比の推移を見ると,我が国においては,通年横ばい傾向にあったが,1996年に上昇しており,イギリス及びフランスにおいては,最近10年間,多少の起伏を示しながらもおおむね上昇する傾向が見られる。アメリカは,上昇傾向にあったが,1994年から低下しているのに対し,ドイツは,低下傾向にあったが,1990年からおおむね上昇する傾向にある。また,韓国は,最近10年間はおおむね横ばい傾向にある。
 殺人について,各国の青年人口比の推移を見ると,我が国においては,最近10年間ほおおむね横ばい傾向にあるのに対し,イギリスでは,最近10年間,多少の起伏を示しながらもおおむね上昇する傾向が見られる。これに対し,アメリカ及びドイツは,上昇傾向にあったが,1994年から低下している。韓国は,1994年に低下した後,横ばいとなっている。
 また,強盗について,各年齢層ごとの人口比を,比率の高いものから順に見ると,いずれの年次においても,我が国とアメリカ,イギリス,ドイツ及び韓国においては,青年,少年,成人の順となっており,フランスは,少年,成人の順となっている。
 強盗について,各国の少年人口比の推移を見ると,最近10年間,我が国とイギリス,ドイツ及びフランスにおいては,おおむね上昇する傾向にある。これに対し,アメリカは,上昇傾向にあったが,1995年から低下している。また,韓国は,最近10年間上昇低下を繰り返している。
 強盗について,各国の青年人口比の推移を見ると,最近10年間・我が国とイギリス及びドイツにおいては,おおむれ上昇する傾向にある。これに対し,アメリカは,上昇傾向にあったが,1993年から低下している。また韓国は,最近10年間上昇低下を繰り返している。