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 平成10年版 犯罪白書 第3編/第2章/第1節/3 

3 罪名別動向

(1) 凶悪犯

 III-4図は,昭和21年以降における殺人及び強盗の少年検挙人員の推移を見たものである(以下,少年刑法犯の主要罪名別検挙人員については,巻末資料III-4参照。)。

III-4図 凶悪犯の少年検挙人員の推移(昭和21年〜平成9年)

 強盗については,昭和23年の3878人をピークとしてその後急速に減少し,20年代末に増加に転じたが,35年の2762人をピークとして再び減少し,46年には1000人を割って869人となった。その後も起伏を示しながら漸減ないし横ばいの傾向にあったが,平成元年から漸増傾向に転じ,8年には26年ぶりに1000人を超え,9年には1701人(前年比57.2%増)と急増している。
 殺人については,昭和40年代前半までは200人台から400人台で増減を繰り返していたが,40年代後半からおおむね減少傾向を示し,50年代に入ると100人を割り,その後はおおむね70人台から90人台で推移し,平成9年には75人(前年比22.7%減)となっている。
 III-5図は,昭和41年以降の凶悪犯の少年検挙人員について,年齢層別に推移を見たものである。

III-5図 凶悪犯の年齢層別少年検挙人員の推移(昭和41年〜平成9年)

 殺人については,平成8年を除いて,いずれの年次も年長少年が圧倒的に多いが,長期的に見ると,いずれの年齢層もおおむね減少傾向にある。年長少年は,昭和41年の257人から急減し,48年には100人を割って79人となり,さらに減少を続けて,平成2年以降は30人台から40人台で推移し,9年は40人となっている。中間少年は,昭和42年の102人から減少し,平成2年以降は,8年の52人を除きおおむね20人台で推移しており,9年は22人となっている。年少少年は,一けた台から10人台で推移し,9年は12人となっている。触法少年は,検挙人員がないか,あっても一けた台であり,9年は1人となっている。
 強盗については,触法少年を除き,いずれの年齢層も,昭和41年以降50年代初めまではおおむね減少し,その後は起伏を示しながら,おおむね横ばいの傾向にあったが,近年いずれも増加傾向を示している。年長少年は平成2年,中間少年は元年からそれぞれ増加に転じ,9年は年長少年が543人(前年比210人,63,1%増),中間少年が779人(同257人,49.2%増)となっている。年少少年も6年以降200人を超え,9年には353人(同140人,65.7%増)となっている。触法少年は,昭和63年以降10人台から20人台で推移しており,平成9年は26人(同12人,85.7%増)となっている。

(2) 粗暴犯

 III-6図は,昭和21年以降における傷害,暴行,脅迫及び恐喝の少年検挙人員の推移を見たものである。

III-6図 粗暴犯の少年検挙人員の推移(昭和21年〜平成9年)

 傷害,暴行及び恐喝については,昭和30年代に入って著しく増加し,先に述べた少年非行の第二の波を特徴づける動きを示している。傷害は36年の1方7197人を,暴行は39年の1万3881人を,恐喝は38年の1万5829人をそれぞれピークとして,40年代に入ると急激に減少したが,50年代半ばから再び増加に転じ,傷害は57年に,暴行は56年に,恐喝は61年にピークに達した。その後は,多少の起伏を示しながら全般的に見て減少傾向にあったが,最近は増加の兆しがうかがえ,平成9年には,傷害は9627人(前年比15.8%増),暴行は2303人(同19.3%増),恐喝は7134人(同13.5%増)といずれも前年を上回っている。

(3) 財産犯

 III-7図は,窃盗,詐欺及び遺失物等横領を含む横領の少年検挙人員の推移を見たものである。

III-7図 財産犯の少年検挙人員の推移(昭和21年〜平成9年)

 窃盗については,少年刑法犯全体の推移に対応して,昭和26年,38年及び58年をそれぞれピークとする三つの波が見られ,58年に20万2028人を記録した後は減少傾向にあり,最近は10万人前後で推移していたが,平成9年には11万8581人(前年比14.6%増〉と増加している。
 III-8図は,平成9年の窃盗事犯少年の手口別構成比を見たものである。万引きがおおむね半数を占めており,次いで,オートバイ盗,自転車盗の順となっている。

III-8図 窃盗事犯少年の手口別構成比(平成9年)

 また,窃盗の手口については年代により変化が見られるが,近年は,万引き,乗物盗等の非侵入盗が増加する一方,空き巣ねらい・忍び込み等の侵入盗が減少傾向にあり,平成9年には前年比1.1ポイント減の5.2%となっている。
 横領は,昭和40年代後半から急激に増加し,平成3年以降はおおむね3万人前後で推移し,9年は3万2869人(前年比10.8%増)となっている。少年による横領は,ほぼ100%遺失物等横領であり,その大半は放置自転車の乗り逃げである。
 なお,平成9年の交通関係業過を除く少年刑法犯検挙人員総数に占める窃盗と横領の割合は,それぞれ66.3%と18.4%であり,この二つの罪名で8割以上を占めている(巻末資料III-3参照)。