平成１０年版　犯罪白書第2編/第5章/第1節

　更生保護とは,犯罪や非行に陥った者が通常の社会の中で健全な社会人として更生するように指導・援助すること及びその制度をいう。現在,その内容は,①仮釈放等の審理・決定,②保護観察の実施③刑事手続上の身体の拘束を解かれた者に対する更生緊急保護④恩赦関係事務⑤地域住民の犯罪予防活動の助長等広範・多岐にわたっている。
　戦後,更生保護制度の発足に際し,昭和25年に保護司法(昭和25年法律第204号)が公布・施行されて保護司制度が導入されたが,保護司制度の充実強化を図るため,平成10年5月,保護司法の一部を改正する法律(平成10年法律第61号)が公布され,11年4月から施行されることとなった(保護司については,本章第3節1（2),保護司組織については,本章第7節1参照。)。
　保護司法の主な改正点は,次のとおりである。
①　保護司会及び保護司会連合会の法定化
　従来から保護司を構成員とする保護司組織が全国に結成され,保護司の活動を支える上で重要な機能を担ってきたが,これらの保護司組織は法律上に根拠のない任意組織に過ぎず,その役割・機能について明確な規定がなかったため,対外的な理解を得る上で障害となり,また,組織運営の負担が一部保護司に偏るなど,組織活動の充実を図ることが難しくなっていた。
　今回の改正では,保護司の職務を支援する組織として,保護区単位の保護司会及び都道府県単位(ただし,北海道にあっては法務大臣が定める区域単位。)の保護司会連合会がそれぞれ法定化され,併せて,それぞれの任務についても規定された。
②　保護司会の計画に基づく保護司の職務の明記
　保護司の職務のうち，保護観察や，受刑者等の社会復帰のための環境調整などの事務は,その内容も明確で，個別に保護観察所の長の指定を受けて実施されているが,犯罪予防活動や処遇に資する各種社会資源の開拓推進活動のように様々な活動形態があり得るものについては,保護司が自主的．自発的に行っているものであり,従来,職務として実施されているかどうかが必ずしも明確でなかった。
　今回の改正により,保護司がその職務を行う場合には,地方更生保護委員会又は保護観察所の長から指定を受けて行うほか,犯罪予防活動等については,保護観察所の長の承認を得た保護司会の計画に従い行うことができることとされ,犯罪予防活動等が保護司の職務とされる場合が明確化された。
③　地方公共団体の保護司及び保護司組織に対する協力規定の新設
　保護司及び保護司組織の活動は,地域社会の安全及び住民福祉の向上に寄与していることから,地方公共団体から様々な支援を受けているが、地力公共団体との協力関係を一層推進していくには，その法律的な根拠を明確にすることが必要となってきた。
　今回の改正により,地方公共団体は,保護司及び保護司組織に対し，必要な協力をすることができるとする協力に関する規定が設けられた。