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3 中間期の処遇の重点 (1) 分類調査 中間期(刑執行開始時の指導・訓練終了後,釈放前指導編入までの間をいう。)には,分類調査として,分類級及び居室配置の決定,処遇指針の決定,移送の実施,累進や仮釈放申請の審査等に役立てるため,再調査(執行刑期が8月未満の者についてはおおむね2月ごとに,その他の者についてはおおむね6月ごとに定期的に行う調査,又は必要の都度臨時に行う調査)が行われる。
(2) 刑務作業 ア 概況 刑務作業は,受利者の改善更生及び社会復帰を図るための重要な処遇の一つであり,受刑者の労働意欲のかん養,職業的技能及び知識の習得,忍耐心・集中心の養成を図ることなどを目的として行われている。刑務作業の形態は,その性質・自的から,生産作業,職業訓練及び自営作業(炊事,洗濯,清掃等の施設の自営に必要な作業(経理作業)と新営,改修等施設の直営工事に必要な作業(営繕作業)がある。)に分かれており,生産作業の業種は,木工,印刷,洋裁,金属等20余種に及び,受刑者は,各人の適性等に応じ,それぞれの業種に指定され就業している。
刑務作業は,刑法上所定の作業を行うことが義務とされている懲役受刑者を中心として実施されているが,このほか,就業する義務のある労役場留置者による作業や法律上は作業を行うことを義務とされていない禁錮受刑者,未決拘禁者等が希望して行う請願作業が刑務作業として実施されている。平成10年3月3旧現在における請願作業に就業した者の比率は,禁錮受刑者では89.3%,未決拘禁者では0.4%となっている。 平成9年度(会計年度)における刑務作業の一日平均就業人員は3万9230人,刑務作業による歳入額は,約123億円である。 なお,昭和58年,国の行財政改革の方針に沿って,財団法人矯正協会刑務作業協力事業部(CAPIC)が,国から一定の補助金の交付を受け,刑務作業の実施に必要な原材料を提供して,その製品を販売する方式が導入された。CAPICの製品は,キャピックというブランドで,毎年6月初旬東京で開催される全国矯正展をはじめ,各地の矯正展等で展示・販売されている。 イ 就業条件 なお,作業時間中の休息時間が認められているほか・作業環境や作業の安全及び衛生については,労働基準法,労働安全衛生法等の趣旨に沿ってその整備が図られている。また,就業者が作業上不測の事故により災害を受けたときなどは,手当金(死傷病手当金)が支給される。
刑務作業の収入は,すべて国の収入となるが,作業に従事した者に対しては,作業賞与金が支給される。この賞与金の性格は,就労の対価としての賃金ではなく,恩恵的・奨励的なもので,作業賞与金は原則として釈放時に支給される。平成9年度(会計年度)の一人1か月の平均作業賞与金計算高は,3905円となっている。 なお,受刑者には一定の条件の下で,余暇時間内に自己の収入となる自己労作,言わば受刑者の内職を行うことが許されており,平成10年3月31日現在,204人が自己労作に従事し,一人1か月平均4479円の収入を得ている。 行刑施設では,構外作業も実施されており,刑務所が管理する構外作業場において行われるほか,民間企業の協力を得て,一般事業所においても実施されている。実施の態様としては,作業場に泊まり込んで行う「泊込作業」と施設から作業場へ通勤して行う「通役作業」とがある。作業の内容は,主として農耕・牧畜,木工,金属,造船等である。 ウ 職業訓練 職業訓練は,受刑者に対し,職業に必要な技能を修得させ,又はその技能を向上させることを目的として,総合訓練,集合訓練及び自所訓練の三つの類型で行われており,できる限り,公の資格又は免許を取得させるように努力が払われている。
総合訓練は,全国各施設から適格者を選定し,指定された7か所の総合職業訓練施設(福井・山口・山形の各刑務所及び川越・奈良・佐賀・函館の各少年刑務所)において実施されている。集合訓練は各矯正管区ごとに,また,自所訓練は施設ごとに,それぞれ訓練種目を定めて実施されており,平成9年度(会計年度)では,集合訓練施設は28か所,自所訓練施設は37か所となっている。職業訓練種目は,板金,溶接,電気工事,自動車整備,建築,左官,木工,製版・印刷,木材工芸,ボイラー運転,建設機械,理容,美容,クリーニング,自動車運転,介護サービス,小型建設機械等の50余種目が実施され,9年度(会計年度)の職業訓練終了人員は1541人であった。同じく,溶接技能者,電気工事士,ボイラー技士等の資格又は免許を取得した者は,総数で2437人となっている。 (3) 教育活動 行刑施設における教育活動は,教科教育,通信教育,生活指導等から成り立っており,受刑者の改善更生を図り,社会復帰を促進させる上で重要な役割を果たしている。
II-21表は,最近3年間における施設外教育活動の実施件数を示したものである。 II-21表 施設外教育活動実施状況(平成7年〜9年) ア 教科教育 教科教育は,義務教育未修了者及び修了はしたが学力の低い者に対し,国語,数学,社会その他の必要な科目の履修又は補習を行うほか,奈良,松本及び盛岡の各少年刑務所において向学心のある者に対し,高等学校の通信制教育を受講させている。また,川越少年刑務所等数か所の刑務所においては意欲のある受刑者に大学入学資格検定の受験指導を行い,受験の便宜をも図っている。
平成9年中の教科教育実施人員は,4775人であり,その教育程度別内訳は,義務教育未修了者401人,義務教育修了のみの者3068人,高校中退者547人,同卒業者417人となっている。 イ 通信教育 通信教育は,受刑者の一般教養,職業的知識・技術等の向上を図ることを目的として行われているが,受講者には,受講に要する費用の全額を国が負担する公費生と,受講者自らが負担する私費生とがある。
平成9年度(会計年度)中の受講者は2996人で,その受講内容は,簿記,書道,ペン習字,英語,電気・無線等である。 ウ 生活指導 生活指導は,受刑者の自覚に訴え,規則正しい生活習慣及び勤労の精神を培い,共同生活を営む態度,習慣,知識等をかん養することを目的とし,受刑者の日常生活を通じて,規律訓練,講話,読書指導,クラブ活動,各種集会,委員会活動(受刑者の中から,給食,衛生,図書,放送,文化等の各委員を選び,当該活動が円滑かつ効率的に行われるようにするための一種の役割活動)等を行わせるとともに,個別又は集団によるカウンセリングを実施している。
エ 処遇類型別指導 処遇類型別指導は,犯罪の行動面や犯罪に至った要因に着目し,同じ類型に属する者を集団として構成し,効果的な指導を展開するものであり,覚せい剤濫用防止指導については,ほぼ全施設において実施されている。このほか,暴力団離脱指導,酒害教育,交通安全教育等の問題類型別に指導が行われている。
(4) 篤志面接及び宗教教誨 ア 篤志面接 篤志面接は,個々の受利者が抱えている精神的悩み,家庭,職業,将来の生活計画等の問題について,民間篤志家である篤志面接委員の助言指導を得て,その解決を図ろうとするものであり,重要な処遇手段の一つとして定着している。篤志面接委員は,学識経験者,宗教家,更生保護関係者等の中から,矯正施設の長が推薦し,矯正管区長が委嘱するものであり,任期は2年で,再委嘱を妨げない。
平成9年12月3畑現在における篤志面接委員は,1228人で,その担当部門別内訳は,文芸230人,教育234人,宗教162人,更生保護156人,法律(法曹)82人,商工71人,社会福祉49人となっている。9年における篤志面接相談内容別実施回数は,II-22表のとおりである。 II-22表 篤志面接相談内容別実施回数(平成9年) なお,篤志面接活動の充実を図るため,篤志面接委員の全国組織として財団法人「全国篤志面接委員連盟」が結成されている。イ 宗教教誨 宗教教誨は,信仰を有する者,宗教を求める者及び宗教的関心を有する者の宗教的要求を充足し,宗教的自由を保障するために,民間の篤志宗教家(「教誨師」と呼ばれる。)により実施されている。宗教教護は,受刑者がその希望する宗教の教義に従って,信仰心を培い,徳性を養うとともに,心情の安定を図り,進んで更生の契機を得ることに役立たせようとするものである。
平成9年12月31日現在における教誨師数及び9年の宗教教書誨の実施状況は,II-23表のとおりである。 II-23表 行刑施設における教誨師数及び宗教教誨実施状況(平成9年) なお,教誨師の組織である教誨師会が,施設単位,都道府県単位,各矯正管区単位で設けられており,さらに全国組織として,財団法人「全国教誨師連盟」がある。(5) 食事,衣類,日用品等 受刑者には,その体質,健康,年齢,作業等を考慮して,必要な食事及び飲料が支給されるほか,日常生活に必要な衣類,寝具,日用品等が貸与又は支給される。
食事については,主食は,.就業の条件によりA食,B食及びC食の3種類に分けられ,男女別によりそれぞれ熱量が異なっている。平成10年4月1日から,A食は1日当たり男子1700kca1,女子1500kca1,B食は同じく1400kca1,1300kca及びC食は同じく1300kca1,1200kcalとして設定し,例えば,成人男子が工場における立位の作業に就業する場合,A食が給与され,副食と合わせて1日2680kca1の食事が給与される。1日の副食費は,平成10年度(会計年度)では,成人受刑者人当たり416.98円となっている。 なお,病人,妊産婦,体力消耗の激しい作業の就業者等の食事については特別に配慮されているほか,宗教上の理由又は食習慣の著しい違いにより特別の食事を必要とする被収容者に対しては,食事内容を変更している。 衣類・寝具については,特に,保温,衛生,体裁等について考慮が払われており,日用品の一部については,自費購入や外部からの差入れも認められている。 (6) 医療・衛生 行刑施設には,その規模や業務内容に応じて,医務部,医務課等が置かれ,医師その他の医療専門職員が配置されて,施設における医療及び衛生関係業務に従事している。また,専門的に医療を行う行刑施設として八王子・岡崎・城野の各医療刑務所及び大阪医療刑務支所が設置されているほか,全国で六つの医療重点施設(府中・名古屋・広島・福岡・宮城・札幌の各刑務所)が指定されており,これらの施設に医療機器や医療専門職員を集中的に配置している。
平成10年4月1日現在行刑施設の医療専門職員の定員は,医師226人,薬剤師35人,栄養士18人,診療放射線技師20人,臨床・衛生検査技士16人及び看護士・看護婦252人である。 (7) 保安 行刑施設の保安(施設の安全及び秩序を維持する作用)は,受刑者の処遇が円滑に行われるための基盤となるものである。
II-24表は,最近3年間について,逃走,殺傷等のいわゆる刑務事故の発生状況を見たものである。 II-24表 行刑施設事故発生件数(平成7年〜9年) 被収容者は,行刑施設の規律に違反した場合,懲罰に処される。平成9年における受刑者の規律違反行為に対する懲罰件数は2万4758件であり,規律違反のうち,被収容者に対する暴行(14.0%),争論(10.2%),怠役(9.0%)が高い比率を占めている。(8) 不服申立制度 被収容者が施設の処置に対して不服のあるときは,一般的な制度としての民事・行政訴訟,告訴・告発,人権侵犯申告等によることもできるが,現行監獄法令上の制度として,法務大臣又は巡閲官(法務大臣の命を受けて行刑施設に対する実地監査を行う法務省の職員)に対し情願を申し立て,又は行刑施設の長に対し面接(所長面接)を申し出ることができる。
情願は,大臣に対しては書面で,巡閲官に対しては書面又は口頭で行われるが,いずれも申立ての内容が事前に施設の職員に知られないよう秘密の申立てが保障されている。 II-25表は,最近3年間における不服申立件数を見たものである。 II-25表 被収容者の不服申立件数(平成7年〜9年) |