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 平成10年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/2 

2 主要特別法犯の動向

 本項においては,特別法犯のうち,本編第2章において記述される薬物犯罪(第1節)及び財政経済犯罪(第7節)を除く主要特別法犯について,その動向を見ることとする(巻末資料I-7参照)

(1) 交通関係

 最近10年間における交通関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移を,道交違反について見たものがI-13図道交違反以外について見たものがI-14図である。

I-13図 道交違反の検察庁新規受理人員の推移(昭和63年〜平成9年)

I-14図道交違反を除く交通関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移(昭和63年〜平成9年)

 道路交通法違反は,交通反則通告制度の適用範囲が昭和62年に拡大されたことに伴い同年以降減少し,平成7年には94万9509人となったが,その後漸増し,9年には100万人台となっている。保管場所法違反については,4年に6万8261人のピークに達した後,減少し,9年には4万3,013人になっている。
 警察庁の統計によって,平成9年における道路交通法違反の取締件数を見ると,その総数は897万644件で,そのうち,交通反則通告制度に基づき,反則事件として告知されたものは789万1572件(88.0%)である。
 告知件数を,違反態様別に多いものから順に見ると,駐停車違反が最も多く240万9885件で,総数の30.5%を占め,以下,速度超過が218万1,735件(27.6%),一時停止違反が77万52件(9.8%)となっている。これに対し,送致件数を違反態様別に多いものから順に見ると,速度超過が45万4797件で最も多く,総数の42.1%を占め,以下,酒気帯びが34万598件(31.6%),無免許が10万2861件(9.5%)となっている(巻末資料1-8参照)

(2) 外事関係

 I-15図は,最近10年間における入管法違反及び外登法違反の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。

I-15図 外事関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移(昭和63年〜平成9年)

 入管法違反については,平成元年から急激な増加を示し,5年には5,000人を超え,9年には1万656人に達している。外登法違反については,3年まで急速に減少し,同年以降はおおむね200人台となっている。
 警察庁の統計によって,平成9年における外事関係特別法犯の検察庁への送致人員を違反態様別に見ると,入管法違反では,不法残留が最も多く,以下,旅券又は許可書の不携帯・呈示拒否,不法入国不法就労助長不法上陸在留資格以外の不法活動の頒となっている。不法就労助長罪の送致人員は,8年には452人であったが,9年は627人に増加している(巻末資料I-9参照)。外登法違反では,新規登録不申請が多数を占めている。

(3) 保安関係

 I-16図は,最近10年間における保安関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。

I-16図 保安関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移(昭和63年〜平成9年)

 銃刀法違反は,平成3年の3420人を底に,4年以降おおむね増加傾向にあったが,9年は前年より減少して4026人となっている。軽犯罪法違反については,近年増加傾向にあったが,7年の5,402人をピークに8年以降減少している。火薬類取締法違反はおおむね減少傾向にあり,7年以降は100人台になっており,酩酊防止法違反は,元年以降200人台後半から300人台の間で推移している。
 警察庁の統計によって,平成9年の保安関係特別法犯につき,違反態様別に送致人員の多いものから順に見ると,銃刀法違反では,刃物の携帯,けん銃等の加重所持けん銃等の不法所持,けん銃等及び猟銃以外の銃砲・刀剣類の不法所持,模造刀剣類の携帯の順,軽犯罪法違反では,はり札・標本物除去,凶器携帯,窃視,田畑等侵入の順,火薬類取締法違反では,所持,貯蔵,消費の順となっている。

(4) 風俗関係

 I-17図は,最近10年間における風俗関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。風営適正化法違反は,近年おおむね減少傾向にあり,平成9年には1854人になっている。売春防止法違反も,おおむね減少傾向にあったが,8年以降は若干増加し1300人台となっている。児童福祉法違反は,5年の406人を底に,6年以降は450人前後で横ばいのまま推移している。一方,公営競技取締法規違反(競馬法違反,自転車競技法違反及びモーターボート競走法違反をいう。)は,6年以降減少していたが,9年には増加に転じて,1737人となっている。

I-17図 風俗関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移(昭和63年〜平成9年)

 警察庁の統計によって,平成9年の風俗関係特別法犯について,違反態様別に送致人員の多いものから噸に見ると,風営適正化法違反では,深夜18歳未満の者を客に接する業務に従事させる行為,無許可営業,18歳未満の者に客の接待をさせる行為の順,売春防止法違反では,周旋等,勧誘等,場所の提供,売春をきせる契約の順となっており,また,児童福祉法違反では,児童に淫行をさせる行為が多数を占めている。

(5) 労働関係

 I-18図は,最近10年間における労働関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。
 労働安全衛生法違反は,最近10年間,1800人台から2100人台の間で推移している。労働基準法違反は,平成5年以降,900人弱で推移していたが,9年には975人になっている。船員法違反は,減少傾向にあったが,4年以降は100人台から200人台前半までの間で推移している。職業安定法違反は,2年以降200人台で推移している。労働者派遣法違反は,5年の200人をピークに,その後は100人前後で推移している。

I-18図 労働関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移(昭和63年〜平成9年)

(6) 環境関係

 I-19図は,最近10年間における環境関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。

I-19図 環境関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移(昭和63年〜平成9年)

 廃棄物処理法違反は,減少傾向にあったが,平成元年以降は1900人台から2,300人台の間で推移している。海洋汚染防止法違反は,近年減少傾向にあり,6年以降は1000人を割り,9年には488人となっている。水質汚濁防止法違反も減少傾向を示していたが,5年以降60人前後で推移している。自然公園法違反は,5年以降10人台から20人台で推移している。大気汚染防止法違反は,昭和63年以降受理人員があったのは,平成元年,3年,8年及び9年のみである。

(7) 選挙関係

 I-20図は,最近10年間における公職選挙法違反の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。

I-20図 公職選挙法違反の検察庁新規受理人員の推移(昭和63年〜平成9年)

 公職選挙法違反は,各年における選挙の有無・種類等によって受理人員に大きな変動があり,平成2,3,5及び7の各年の受理人員が多くなっているが,これは,2年2月及び5年7月に衆議院議員総選挙が,3年4月及び7年4月に統一地方選挙が,それぞれ行われたことによるものである。しかし,10月に衆議院議員総選挙が行われた8年の受理人員は,3190人であり,前回の5年の7707人を下回っている。
 警察庁の統計によって,平成9年の公職選挙法違反につき,違反態様別に送致人員の多いものから順に見ると,買収・利益誘導が圧倒的に多く,次いで,詐欺登録・詐欺投票・投票の偽造等,文書図画に関する制限違反の順となっている。
 なお,平成6年2月及び同年11月の公職選挙法の一部改正(同年12月施行)により,いわゆる連座制が強化されたが,改正後に,検察官が連座制に係る当選無効等の訴訟を提起したのほ36件であり,そのうち,原告勝訴の判決が確定したものは30件(10年4月末現在)である。さらに,検察官が提起した訴訟36件の内訳を見ると,7年4月に行われた統一地方選挙に関するものが20件,8年11月に行われた衆議院議員総選挙に関するものが9件,その他の地方選挙に関するものが7件となっており,その内容を見ると,当選無効及び立候補禁止訴訟が7件,立候補禁止訴訟が29件である。また,連座制の対象となった者64人をその身分ごとに見ると,親族19人,秘書6人,組織的選挙運動管理者等41人(複数の身分を有している者がいるため,対象者総数と合致しない。)となっている。

(8) 条例違反

 I-21図は,最近10年間における条拠違反の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。

I-21図 条例違反の検察庁新規受理人員の推移(昭和63年〜平成9年)

 青少年保護育成条例違反については,平成5年以降漸増傾向にある。公安条例違反については,2年から8年まで10人台で推移していたが,9年は45人となっている。