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戦後の少年非行の動向を少年刑法犯検挙人員を基に振り返ってみると,昭和26年,39年及び58年をそれぞれピークとする三つの波が認められる。
第一の波は,終戦直後の社会的・経済的混乱等を背景としたものであり,第二の波は,10歳代後半の少年人口の増加と,我が国経済の高度成長過程における工業化,都市化等の急激な社会変動を背景としたものであった。また,第三の波は,経済的に豊かな社会における価値観の多様化,家庭や地域社会が果たすべき保護的・教育的機能の低下等を背景としたもので,非行の低年齢化を特徴とするものであった。 ところで,少年刑法犯検挙人員は,昭和59年以降,10歳代の少年人口が61年をピークに減少傾向にあることなどを反映して減少傾向を示していたが,平成7年を底に増加傾向に転じ,交通関係業過を除く刑法犯検挙人員に占める少年の比率も,9年には5割を超えている。これに伴い,8年以降検察庁における少年の新規受理人員,少年保護事件の家庭裁判所受理人員,少年鑑別所新収容人員,少年院新収容者数及び保護観察処分少年の新規受理人員は,いずれも増加している。 また,近時,社会の耳目をしょう動させた少年による殺傷事件等の凶悪事犯が発生しているほか,少年の強盗事犯や中学生・高校生による覚せい剤事犯の増加,過去に処分歴のない少年による非行の増加等もあって,少年非行問題については,かつてないほど高い関心が寄せられているように思われる。 一方,近年,少年審判における事実認定が問題となった事件が生じたことを契機として,現行少年審判制度における事実認定手続の在り方が各方面から問われるようになり,少年法改正をめぐる議論も活発化している。 このような状況を踏まえ,本白書では,平成9年を中心とした最近の犯罪動向と犯罪者処遇の実情を概観するとともに,特集として「少年非行の動向と非行少年の処遇」を取り上津,最近における少年非行の動向や非行少年の処遇の実情諸外国における少年非行の動向や少年司法制度の運用状況等を概観し,必要な分析を加えることにより,最近の少年非行や非行少年の特質等を明らかにし,より効果的な少年非行対策を講ずる上で役に立つ資料を提供しようと試みた。本白書が,各方面でなされている議論に何程かの寄与をなし得るとすれば幸いである。 終わりに,本白書を作成するに当たっては,最高裁判所事務総局,警察庁,外務省,厚生省その他の関係機関から多大の御協力をいただいたことに対し,改めて謝意を表する次第である。 平成10年10月 河内 悠紀 法務総合研究所長 |