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 平成 9年版 犯罪白書 第3編/第2章/第1節/3 

3 裁判所における事件処理

(1) 裁判確定の状況
 昭和32年以降の40年間の全事件裁判確定人員を見ると,30年代前半には170万人前後であったが,30年代後半に急増し,40年には約462万人のピークに達した。その後は,長期的に見ると減少傾向を示し,最近10年間は100万人台で推移し,平成8年は約107万人となっている。この間の増減は,いずれの年次においても確定人員の93%以上を占めている財産刑(罰金及び科料)の増減と軌を一にしている。また,第一審終局処理人員を手続別に見ても,例年,圧倒的多数の事件が略式手続によっており,第一審終局処理人員中に通常手続の占める比率は,昭和50年代から61年までは3%台で,62年以降は4%台から5%台で,それぞれ推移している。
 比較的重い犯罪に係ると思われる終局裁判の状況を知るために,死刑,懲役刑及び禁錮刑を受けた確定人員の推移を見ると,昭和32年にはこの合計が10万人を超えていたが,その後は減少し,38年以降,平成元年までの間は6万人台から7万人台で推移している。2年以降は5万人台で推移していたが,8年には7年ぶりに6万人を超えている。
 一方,無罪の確定人員は,昭和32年から49年までの間は,おおむね400人台から500人台の年次が続き,その間の45年には623人の最高値を記録したが,その後は,減少傾向を示し,平成8年は45人である。有罪人員と無罪人員の合計に占める無罪人員の比率は,最も高かった昭和45年においても0.04%である。死刑,懲役刑及び禁錮刑による有罪人員と無罪人員の合計に占める無罪人員の比率についても,最も高かった45年においても0.94%である。
(2) 量刑の状況
 裁判の段階における処遇は量刑において現れるとともに,犯罪者に対し,施設外における自助の精神の下で,自らの更生と自戒を求めるために,その刑の執行が猶予されることもある。この刑の執行猶予制度は戦前から存在したが,戦後には制度の変革がなされ,昭和22年,28年及び29年の3度にわたる刑法の一部改正において,刑の執行を猶予できる範囲が拡大され,前科による欠格期間が短縮され,執行猶予中の者に対する再度の執行猶予が認められ,初度の執行猶予の場合でも保護観察に付することが可能となるなどしている。
 そこで,裁判所における科刑状況を通常第一審の判決に基づいて見ると,まず死刑については,昭和22年及び23年当時には,100人を超える言渡し人員があったが,40年代半ば以降は,多い年でも11人である。無期懲役刑については,35年までは,少ない年でも70人台の,多い年には190人台の言渡し人員があったが,平成に入ってからは,多い年でも40人台である。
 また,昭和62年以降の10年間に地方裁判所及び簡易裁判所で有期刑を科せられた者について見ると,2年以上の刑期の言渡しを受けた人員の比率は,62年には約16%であったものが,その後は徐々に上昇し,平成8年には約24%となっている。同じ期間,業過についても,通常第一審で懲役刑又は禁錮刑を言い渡された者のうち1年以上の刑の言渡しを受けた者の比率が上昇し,昭和62年には約48%であったものが,平成8年には約73%となっている。
 次に,執行猶予の状況について見ることとする。昭和35年以降の確定人員についての懲役刑の執行猶予率は,おおむね50%台で推移したが,平成に入ってからは,ほぼ一貫した上昇傾向が見られ,6年以降は60%台を示している。覚せい剤取締法違反について通常第一審で有罪判決を受けた者についても,同様に執行猶予率の上昇傾向が見受けられ,昭和61年から平成2年までの間は30%台であったものが,8年には51.2%となっている。しかし,一方で,昭和62年以降の10年間,再度の執行猶予を付された確定人員は,減少傾向を示している。
(3) 審理期間の状況
 迅速な裁判は憲法が要請するところであり,昭和40年代末には,長期公判問題が論議されたが,近年再び,迅速な裁判についての関心が高まっているように見受けられる。平成4年以降の5年間に地方裁判所及び家庭裁判所で終結した第一審公判事件については,いずれの年次においても,90%を超える事件が6月以内に審理を終えており,1年を超える事件はおおむね2%である。また,同じ期間に終結した上訴審公判事件の,起訴時を起算点とした上訴審終局までの通算審理期間が2年以内であるものは,控訴審については90%を超え,上告審については70%を超えている。
(4) 刑事補償の状況
 憲法の刑事補償に関する規定を具体化するものとして刑事補償法が制定されている。同法に基づく近年の刑事補償の状況を見ると,昭和62年以降の10年間,補償対象人員は,20人台から50人台の間を推移しており,1日当たりの平均補償金額は62年の約6,000円から平成8年の約1万円に増加している。