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 平成 9年版 犯罪白書 第3編/第1章/第3節/2 

2 刑法犯の動向

 昭和60年代から平成にかけて,刑法犯の認知件数は,昭和50年代に引き続き,多少の起伏を示しながらも増加を続け,60年には既に160万件に達して終戦直後を上回る過去最高の数値を記録したが,その後の多くの年次においても最高記録を更新し続け,平成8年には,過去最高の約181万2,000件を記録した。
 交通関係業過の認知件数も,同様に昭和50年代に引き続いて増加を続け,60年には50万件を超え,平成4年には60万件を超え,7年には,それまでの最高だった昭和45年の件数を上回って約65万3,000件に達したが,平成8年には,わずかではあるが前年を更に上回って,過去最高の件数を記録している。8年の,交通関係業過を含む刑法犯認知件数も,約246万6,000件と過去最高を記録している。
 刑法犯の発生率は,平成4年以降は,昭和30年代と同レベルの1,400台で推移している。刑法犯の検挙率は,60年に64.2%を記録したものの,その後は低下傾向にあり,平成5年以降は約40%から43%の間で推移している。
 刑法犯の認知件数について,罪名別動向を見ると,殺人は,昭和29年に約3,100件のピークを記録した後,長期的には減少し,平成2年以降は,1,200件台で推移し,この間,3年には戦後最低の1,215件を示し,8年には戦後二番目に低い1,218件となっている。強盗については,昭和23年には1万1,000件に近かった認知件数が,長期的には減少し,平成元年には戦後最低の1,586件を記録したが,2年以降は増加の兆しを示し,8年には2,463件となっている。昭和20年代前半には300件を超えていた強盗致死の認知件数は,平成に入ってからは,20件台から40件台の間で推移している。
 財産犯では,窃盗の認知件数は,昭和60年にはそれまでで最高の約138万1,000件に達していたが,その後も増加傾向は収まらず,平成8年には約158万9,000件の戦後最高数値を記録している。しかし,この増加は,前述のとおり,比較的軽微な事犯の増加によるところが大きい。横領の認知件数は,昭和40年代には1万件未満を示す年次が多かったが,60年には4万件を超え,平成5年には6万件を超えている。しかし,この増加も遺失物等横領の増加によるところが大きく,横領の認知件数中に占める遺失物等横領の比率は,90%を超えている。
 その他,近年における刑法犯の認知件数の動向で注目すべき諸点を挙げると,傷害,暴行,脅迫及び恐喝の粗暴犯は,極めて多い件数を記録していた昭和30年代又は40年代前半と比べれば,はるかに低い件数で推移している。性犯罪のうち一般的に悪質といえる強姦は,30年代半ばから40年代前半にかけては6,000件を超えていたが,その後は減少し,平成に入ってからは,おおむね1,500件台又は1,600件台となっている。このような傾向も認められる一方で,重大な結果の生じることの多い放火は,昭和57年に約2,300件のピークを記録した後,減少傾向を示し,平成3年には1,300件台となったものの,近年は増加傾向にあり,8年には1,800件台に達し,略取・誘拐は,昭和50年代末には100件を下回っていたものが,平成4年以降は200件を超えているなど,警戒すべき動向も見受けられる。