警察庁刑事局の資料により，日本国内で犯罪を犯して国外に逃亡した被疑者の状況について見ると，次のとおりである。
　国外逃亡被疑者の数について，最近10年間の推移を見たのがII-90図である。国外逃亡被疑者数は，近年，増加の傾向を強めていたが，平成8年には，前年と比べ56人(16.0％)減少した。8年における国外逃亡被疑者合計293人を国籍別に見ると，中国が75人(総数の25.6％)で最も多く，次いで，日本72人(同24.6％)，韓国・朝鮮20人(同6.8％)，台湾11人(同3.7％)，香港10人(同3.4％)等となっている。

II-90図　国外逃亡被疑者数の推移(昭和62年〜平成8年)

　平成8年の国外逃亡被疑者の罪種別内訳について，刑法犯の被疑者225人(うち，日本国籍44人)の内訳は，凶悪犯(ここでは，殺人，強盗，放火及び強姦をいう。)が103人(同7人)で最も多く，窃盗犯が66人(同9人)，知能犯(ここでは，詐欺，横領，偽造，贈収賄及び背任をいう。)が38人(同24人)，粗暴犯(ここでは，暴行，傷害，脅迫，恐喝及び凶器準備集合をいう。)が9人(同1人)等となっている。また，特別法犯の被疑者68人(同28人)の内訳は，薬物関係(ここでは，覚せい剤取締法違反，麻薬取締法違反及び大麻取締法違反をいう。)が37人(同13人)で最も多く，次いで，入管法違反が14人(同4人)，銃刀法違反が5人(同4人)等となっている。
　平成8年の国外逃亡被疑者について，その推定逃亡先国(地域を含む。)を被疑者数の多い順に見ると，フィリピン28人(うち，日本国籍24人)，中国22人(同0人)，韓国・朝鮮16人(同5人)，台湾15人(同0人)，アメリカ15人(同10人)等となっている。
　また，平成8年の国外逃亡被疑者293人のうち，出国年月日が判明している被疑者は121人(うち，日本国籍39人)である。この121人の出国日が，それぞれの犯行日から何日目であったかについて見ると，犯行当日が5人(同4人)，犯行翌日が18人(同4人)，2日後が5人(同2人)となっている。犯行後10日以内に国外に逃亡した被疑者が合計で51人(42.1％)，犯行後30日以内に国外に逃亡した被疑者が合計で63人(52.1％)となっている。