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恩赦の効力による種類
大赦 有罪の言渡しを受けた者について,その言渡しの効力を失わせる。有罪の言渡しを受けない者については,公訴権を消滅させる。 特赦 有罪の言渡しを受けた特定の者について,その言渡しの効力を失わせる。 減刑 刑の言渡しを受けた者について,刑を減軽し,又は刑の執行を減軽する。刑の執行猶予中の者については,刑の減軽と合わせて猶予の期間を短縮することができる。 刑の執行の免除 刑の言渡しを受けた特定の者について,刑の執行を免除する。 復権 有罪の言渡しを受けたため,法令の定めるところにより資格を喪失し,又は停止されている者について,その資格を回復する。 上記は,恩赦をその効力によって分類したものだが,これを,実施方法で見た場合,[1]政令により罪や刑の種類,基準日等を定め,該当者に対して一律に行われる政令恩赦(大赦,減刑及び復権)と,[2]特定の者に対して個別審査の上行われる個別恩赦(特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権)とに大別でき,さらに,個別恩赦は常時恩赦と特別基準恩赦とに分けることができる。常時恩赦は常時行われ,一方,特別基準恩赦は,一般には政令恩赦の際に同恩赦の要件から漏れた者等を対象に,内閣の定める基準により,一定の期間を限って行われるが,政令恩赦と関係なく単独で行われる場合もある。 個別恩赦が行われるには,まず,検察官,行刑施設の長又は保護観察所の長が,職権により,又は本人の出願に基づいて,中央更生保護審査会に恩赦の上申をする。これを受けた同審査会は,審査を行い,恩赦を相当とした場合には,法務大臣に恩赦の申出を行い,法務大臣は閣議を請議し,これを受けた内閣が恩赦を決定し,次いで,天皇の認証を受け,恩赦の効力が生ずる。 旧憲法下においては,恩赦は天皇の人権事項とされ,また,その運用も勅令恩赦(現在の政令恩赦)と特別基準恩赦が中心で,常時恩赦は極めて制限的なものであった。しかし,新憲法の下では,恩赦は内閣が決定し,天皇がこれを認証するものと定められ,恩赦法及び恩赦法施行規則(昭和22年司法省令第78号)において,その手続等が定められた。そして,個別恩赦については本人の出願が大幅に認められ,また,恩赦の決定に民意と専門的意見を反映させるために中央更生保護委員会(昭和27年8月からは中央更生保護審査会)が設置され,恩赦の刑事政策的目的が明確化された。 常時恩赦について,II-33表は,平成8年に閣議において恩赦決定となった者を上申者別及び種類別に見たものである(昭和24年以降に処理された常時恩赦の人員については,巻末資料II-34を参照。)。 II-33表 常時恩赦の上申者・種類別決定人員 復権は,既に更生したと認められる者が,前科のあることにより資格が制限されるなど社会的活動の障害となっている場合に,法令の定めるところにより喪失し又は停止されている資格を回復させるものである。また,刑の執恩赦及び特別基準恩赦行の免除は,主として無期刑の仮出獄者について保護観察を終了させる措置として執られている。今日,復権及び刑の執行の免除は,いずれも,これらの者の社会復帰を一層促進する刑事政策的役割を果たしている。II-34表 戦後の政令 II-34表は,戦後に行われた政令恩赦及び特別基準恩赦の状況を一覧表として掲げたものである。最近では,平成5年6月に皇太子徳仁親王の結婚の儀が行われるに当たり,特別基準恩赦が実施された。 |