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 平成 9年版 犯罪白書 第2編/第6章/第3節/1 

第3節 保護観察

1 概  説

(1) 保護観察の種類
 保護観察は,犯罪者や非行少年に通常の社会生活を営ませながら,一定の遵守事項を守るように指導するとともに,必要な補導援護を行うことによって,その改善更生を図ろうとするものである。
 保護観察対象者の種類と保護観察の期間
 [1] 保護観察処分少年(家庭裁判所の決定により保護観察に付された者)
 原則として保護観察決定の日から20歳に達するまでで,20歳までの期間が2年に満たない場合は,決定の日から2年間
 [2] 少年院仮退院者(少年院を仮退院した者)
 原則として少年院を仮退院した日から20歳に達するまでの期間
 [3] 仮出獄者(行刑施設を仮出獄した者)
 原則として仮出獄の日から残刑期間が満了するまでの期間
 [4] 保護観察付き執行猶予者(刑の執行を猶予され保護観察に付された者)
 判決確定の日から執行猶予の期間が満了するまでの期間
 [5] 婦人補導院仮退院者(婦人補導院を仮退院した者)
 婦人補導院を仮退院した日から補導処分の残期間が満了するまでの期間
 現行の保護観察制度については,犯罪者予防更生法等の法令によって,[1]必要かつ相当な範囲内における実施,[2]個々の対象者に適切な処遇方法の採用,及び[3]公正,誠意ある態度といった諸原則が定められている。これらは,基本的人権を尊重する憲法の理念に合致したものであるばかりでなく,ケースワークに求められる諸原則を踏まえたものであって,人道性及び科学性という現行制度の特色を見い出すことができる。
(2) 保護観察の実施態勢
ア 保護観察官と保護司の協働態勢
 保護観察の処遇は,通常は,保護観察官と保護司との協働態勢により行われる。これは,一人の保護観察対象者について,一人の保護観察官と一人の保護司とがいずれも保護観察の実行機関として協働して担当するものである。
 保護観察官は,心理学,教育学,社会学等の更生保護に関する諸科学に基づく専門的知識により職務を行い,また,法務大臣から委嘱を受けた民間篤志家である保護司は,地域性・民間性を生かした活動を行っている。
 保護観察官は,保護観察開始当初において,対象者との面接や関係記録等に基づき,保護観察実施上の問題点や方針等を明らかにし,処遇計画を立てる。保護司は,この方針に沿って,面接,訪問等を通して対象者やその家族と接触し,指導・援助を行っている。こうした処遇の経過は,毎月,保護司から保護観察所に報告され,これを受けた保護観察官は,保護司との連携を保ちながら必要に応じて対象者や関係者と面接するなどして,状況の変化に応じた処遇上の措置を講じている。
 この協働態勢により,保護観察官の専門性・科学性と保護司の地域性・民間性とが有機的に組み合わさって実施される点に,我が国の保護観察制度の特徴がある。
イ 保護司
 保護司は,保護司法によって,犯罪を犯した者の改善及び更生を助けるとともに,犯罪の予防のため世論の啓発に努めることで,地域社会の浄化を図り,個人と公共の福祉に寄与することが,その使命とされ,人格や行動について社会的な信望があること,職務の遂行に必要な熱意と時間的余裕があることなどの資格要件が定められており,守秘義務等の責任が課せられている。また,保護司には,給与は支給されないが,職務に要した費用の全部又は一部が実費弁償される。
 保護司制度の淵源は,明治時代の釈放者保護事業(いわゆる免囚保護事業)において,地域の有力者を委員等の名称をもって出獄者の保護・善導に当たらせた試みにまでたどれる。しかし,現行の保護司制度のように主務大臣等の行政機関が法令に基づいて民間の篤志家を任命する制度は,大正12年,(旧)少年法による嘱託少年保護司の制度により始まった。昭和13年には,前年に結成された全日本司法保護事業連盟が全国で約1,300人の民間篤志家に司法保護委員を委嘱した。翌14年には司法保護事業法が施行されて司法保護委員制度の法制化が実現し,同時に施行された司法保護委員令(昭和14年勅令第644号)等により,司法保護委員は,司法大臣の任命を受けて仮出獄者,保護処分少年等の観察保護に当たる非常勤・無給の国家公務員となった。この司法保護委員制度が,現在の保護司制度の前身である。
 戦後,更生保護制度の発足に際し,昭和25年の保護司法の公布・施行によって,司法保護委員は新たに保護司と名称を変え,保護司制度が成立した。当時,地方委員会及び保護観察所が少年・成人別に分けられていたことに対応し,保護司も少年保護司と成人保護司の二種類が置かれることとなったが,27年の法務府等の機構改革の際,この区分は廃止・統合されて,単に保護司と呼ぶ現行の制度となった(保護司の組織については,本章第7節参照。)。
 保護司の定数は,昭和25年に保護司法で5万2,500人を超えないものと定められ,以来現在まで変わっていないが,実人員は,60年以降,4万8,000人台で推移し,平成8年12月31日現在,4万8,801人となっている(法務省保護局の資料による。)。
 女性保護司の保護司総数に占める比率は,昭和28年には7.2%であったものが,その後一貫して上昇し,平成8年12月31日には22.6%に至っている。
 II-43図は,昭和28年及び平成8年における保護司の職業別の構成比を対比して見たものである。
 なお,保護司の処遇能力を高めるため,保護観察所では,保護司に対する各種研修を定期的・計画的に実施している。

II-43図 保護司の職業別構成比