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1 交通事犯 昭和52年以降の20年間における罪種別の起訴率及び起訴猶予率の推移については,交通関係業過を除く刑法犯に関しては大きな変動が認められないのに対し,62年以降,交通関係業過の起訴猶予率が上昇し,それとともに起訴率が下降している(本章第4節参照)。
この変化の背景には,[1]「国民皆免許時代」「くるま社会」において,軽微な事件について国民の多数が刑事罰の対象となるような事態となることは,刑罰の在り方として適当ではないこと,[2]保険制度が普及し,治療費や修繕費に対する保険による補償が充実してきたことに伴い,加害者が起訴されなくても,被害者が納得することが多いこと,[3]交通事故の防止は,刑罰のみに頼るべきものではなく,行政上の規制・制裁をはじめ,各種の総合的な対策を講ずることによって達成されるべきものであること,及び,[4]交通関係業過は,従来から,その多くが略式手続によって処理され,少額の罰金が科されていたが,このような事態は,罰金の刑罰としての感銘力を低下させ,刑事司法全体を軽視する風潮を招来するおそれがあることなどを理由に,検察庁においてこの種事件処理の在り方等について見直しがなされたことなどがあるものと考えられる。 道交違反については,昭和52年以降,90%以上の起訴率が続き,起訴猶予率は2%台から5%台で推移している。(本章第4節参照) II-8図は,平成8年における終局処理区分別構成比を一般事件と交通事件とに分けて見たものである。 交通関係業過と道交違反の公判請求の比率は,いずれも一般事件と比べて極めて低い。ただし,道交違反の略式命令の比率は極めて高く,不起訴(そのほとんどは起訴猶予)の比率は低い。 II-8図 検察庁終局処理人員の処理区分別構成比 |