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2 少年特別法犯の動向 I-66図は,警察庁の統計により少年特別法犯の内訳が明らかにされた昭和31年以降の道交違反等交通関係法令違反を除く特別法犯の罪名別送致人員の推移を示したものである。(巻末資料I-17参照)
I-66図 少年特別法犯の送致人員の推移 特別法犯送致人員総数の動きを見ると,昭和38年の1万8,967人と58年の3万9,062人をピークとする大きな波が見られる。罪名別に見ると,30年代は銃刀法違反が多く,同法違反による送致人員が1万人を超えた38年を中心とする数年間は,交通関係法令違反を除く少年特別法犯送致人員の5割以上を同法違反が占める状況が続いたが,その後は著しく減少し,52年以降はおおむね400人ないし500人前後で推移している。これに代わって,昭和40年代の後半からは,薬物関係の犯罪が著しく増加している。少年の薬物犯罪において圧倒的多数を占めるのは毒劇法違反であり,次いで覚せい剤事犯である。 I-67図は,昭和47年に毒物及び劇物取締法の一部改正(同年8月施行)が行われ,シンナー等有機溶剤の濫用行為,濫用することの情を知って販売する行為等が犯罪とされることになって以降の,同法違反による少年送致人員及び少年比(送致人員総数に占める少年の比率)の推移を示したものである。同法違反による少年送致人員は,47年以降急増し,57年には2万9,254人とピークを迎えた後,引き続き2万人台で推移していたが,平成3年以降減少が続き,8年には5,722人と,ピーク時の約5分の1となっている。 少年比の推移を見ると,昭和47年以降年々上昇し,58年から平成4年までは80%を超える高率で推移したが,最近は下降傾向にあり,8年には65.8%となっている。 I-67図 毒劇法違反の少年送致人員及び少年比の推移 I-68図は,厚生省医薬安全局,警察庁生活安全局及び海上保安庁警備救難部の資料により,昭和45年から平成8年までの間における少年による覚せい剤事犯検挙人員及び少年比(検挙人員総数に占める少年の比率)の推移を見たものである。少年による覚せい剤事犯は,昭和50年代に入ってから急増し,57年の2,769人をピークとしてその後減少に転じたが,ここ数年は増減を繰り返しており,8年は前年比359人増の1,442人となっている。I-68図 覚せい剤事犯の少年検挙人員及び少年比の推移 I-69図は,厚生省医薬安全局,警察庁生活安全局及び海上保安庁警備救難部の資料により,昭和45年から平成8年までの間における麻薬等事犯の少年検挙人員の推移を見たものである。麻薬取締法違反の少年検挙人員は,昭和48年の98人をピークに減少し,50年以降は一けたないし20人前後の低い水準で推移している。大麻取締法違反の少年検挙人員は,53年に209人とピークに達した後減少し,60年代に入って再び増加傾向を示していたが,平成6年の303人をピークに減少に転じている。I-69図 麻薬等事犯の少年検挙人員の推移 平成8年における交通関係法令違反を除く特別法犯送致人員総数に占める罪名別構成比を見ると,毒劇法違反が61.1%で最も多く,次いで覚せい剤取締法違反の15.3%,以下,軽犯罪法違反(6.1%),銃刀法違反(5.1%)等となっている。前年と比べると,毒劇法が6.0ポイント減少した反面,覚せい剤取締法違反が5.0ポイント上昇し,依然としてこの二つの罪名で8割近くを占めている。次に,道交違反等の動向であるが,昭和30年代以降,モータリゼーションの進行に伴って交通犯罪が急増している。自動車やオートバイは,少年たちにとっては,単なる交通手段にとどまらず,自動車等の運転に伴うスリルやスピード感が,欲求の充足や不満の解消手段として魅力あるものになっており,暴走族の存在や道路交通法違反の違反態様において,成人の交通犯罪との差異が認められる。 I-70図は,昭和41年以降の少年の道交違反送致人員及び車両等の運転に関する道路交通法違反取締件数(反則事件告知件数及び非反則事件送致件数)の推移を見たものである。 昭和41年に約75万人を数えた少年の道交違反送致人員は,徐々に減少し,45年5月に道路交通法が一部改正(同年8月施行)され,少年にも交通反則通告制度が適用されることになったことから,46年には約25万人に激減した。50年代に入ると再び漸増傾向を示したが,62年に交通反則通告制度の適用範囲が拡大されたことから再び大幅に減少し,以後,減少傾向にあり,平成8年には11万4,548人となっている。 I-70図 少年の道交違反送致人員及び道路交通法違反取締件数の推移 一方,少年の道路交通法違反の取締件数は,昭和40年代半ば以降急激に増加し,60年には約194万件とピークに達したが,その後は減少傾向にある。平成8年の取締件数は79万9,689件で,このうち,68万8,278件(86.1%)は反則事件として告知されたものである。また,8年における少年の非反則事件について違反態様別の構成比を見ると,無免許が46.2%で最も高く,次いで,最高速度違反(25.6%),酒気帯び(8.6%),定員外乗車(4.5%)の順となっており,成人と比較すると,無免許(成人は5.7%)の占める割合の高さが目立っている。 なお,少年の交通非行の特徴の一つである暴走族については,本章第2節3で述べることとする。 |