7 労働関係法令 終戦までは,特定の労働者を対象とし,特定の事項について断片的に労働条件の内容を規定する法律はあったものの,それらは女子及び年少者の保護,あるいは産業災害の犠牲者に対する生活の扶助等を目的とするものにすぎなかった。労働者の保護等を図り,全面的に労働条件そのものの実体を規定するための主要な法律として,昭和22年に,労働基準法(昭和22年法律第49号),船員法(昭和22年法律第100号)及び職業安定法(昭和22年法律第141号)が公布された。その後,産業活動の急速な変化に対応した労働者の安全と健康の確保,労働力の需給における多様かつ著しい変化への対応等を目指し,これらの基本的な法律の一部分を取り込むなどして,労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年法律第88号)が制定されている。 労働基準法は,労働関係特別法の中心として,憲法27条2項の「賃金,就業時間,休息その他の勤労条件に関する基準は,法律でこれを定める。」との規定に基づいて昭和22年4月に公布(同年9月及び11月施行)され,強制労働の禁止,中間搾取の排除,労働者として使用することのできる最低年齢,年少者及び女子の坑内労働の禁止等,使用者に義務を課する多くの規定とそれらに違反する行為に対する罰則が設けられた。同法は,その後平成8年末までの間に26回に及ぶ改正が行われ,その際,罰則が適用される行為の範囲に変更が生じたり,罰金額の上限の引上げが行われるなどしている。 船員法は,従前の船員法(昭和12年法律第79号)を全面改正するものとして昭和22年9月に公布(一部を除き同月施行)された。同法には主として海上での労働条件に関する規定が設けられ,その後,労働基準法の改正に伴うなどして,平成8年末までの間に19回の改正が行われている。同法には,船長に対しては,船舶に危険のある場合の処置に関する規定違反等に係る罰則が,また,海員に対しては上長に対する暴行又は脅迫行為等に係る罰則がそれぞれ設けられた。 職業安定法は,各人にその有する能力に適当な職業に就く機会を与えることによって,産業に必要な労働力を充足し,もって職業の安定を図ることなどを目的とし,昭和22年11月に公布(同年12月施行)された。同法には,暴行,脅迫,監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって,職業紹介,労働者の募集,又は労働者の供給を行った者,公衆衛生・公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で同様の行為を行った者等に対する罰則が設けられた。その後平成8年末までの間に34回の改正を重ねている。 労働安全衛生法は,昭和47年6月に労働基準法とあいまって労働災害の防止のための危険防止基準の確立等,職場における労働者の安全と健康を確保するととなどを目的として,労働基準法の労働者の安全及び衛生に関する諸規定の改正に伴い公布(一部を除き同年10月施行)され,その後平成8年末までの改正は11回を数えている。これらの改正においては,主に製造業及び建設業等を中心とした労働災害の防止の強化が図られてきたが,4年5月の一部改正(同年7月及び10月施行)では,快適な職場環境の形成のための措置として,事業者の責務等が定められた。同法には,有害物製造等の禁止をはじめとする多くの規定の違反に対する罰則が定められている。 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律は,いわゆる人材派遣業の増加とそこで就業する労働者数の増加に伴い,労働者派遣事業の適正な運営を確保するなどの目的で昭和60年7月に公布(61年7月施行)され,その後平成8年末までに9回の改正が行われている。同法においては,専門的な知識,技術又は経験を必要とするなど一定の条件の下に限定されたいわゆる適用対象業務について,一定の要件の下で許可を受けた事業主又は届出を行った事業主に対し,労働者派遣事業を認め,公衆衛生・公衆道徳上有害な業務に就かせる目的での労働者派遣等に対する罰則が設けられている。この法律の公布に伴い,職業安定法についても,昭和60年7月に,民間の職業紹介事業,労働者募集事業等につき,その労働力需給調整機能が効果的に発揮されるよう,それまでの規制の合理化等を行う改正(61年7月施行)がなされている。
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