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 平成 9年版 犯罪白書 第1編/第2章/第2節/4 

4 外事関係法令

 終戦時における出入国管理行政は,昭和14年に制定・施行された外国人ノ入国,滞在及退去ニ関スル件(昭和14年内務省令第6号)によって運用されていたが,22年5月,連合国軍最高司令官の指示を受け,主として在留外国人の登録とその違反者に対する退去強制手続を定める外国人登録令(昭和22年勅令第207号)が公布・施行された。外国人登録令は,連合国軍最高司令官の承認を受けた場合を除き,外国人の入国を禁じ,不法入国に係る罪,新規外国人登録,登録居住地の変更又は登録事項の変更に係る不申請・虚偽申請の罪等の罰則を定めた。
 なお,上記内務省令は,外国人登録令の公布・施行に際し廃止された。
 その後,我が国の国際復帰を前に,出入国及び退去強制の手続を含む法制上の整備を図るため,昭和26年10月,いわゆるポツダム政令として出入国管理令(昭和26年政令第319号)が公布(同年11月施行)されたが,同令には,不法入国者,不法上陸者,不法残留者等に関する罰則規定が設けられた。
 昭和27年4月には,日本国との平和条約(昭和27年条約第5号)が発効するに伴い,出入国管理令は,ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律(昭和27年法律第126号)により,法律としての効力を与えられた。また,新たに外国人登録法(昭和27年法律第125号)が公布・施行され,外国人登録令は廃止された。同法は,外国人登録令のうちの外国人登録に関する多くの規定を引き継ぐとともに,新たに,外国人登録証明書の有効期間を2年とし,同期間満了前に新たな登録証明書の交付申請を義務づける制度を導入した。
 昭和31年には,外国人登録法が一部改正(同年8月施行)され,これにより,登録証明書の有効期間が廃止される一方,3年ごとの登録証明書の切替交付申請(登録の確認申請)を義務づける制度が新たに設けられた。
 その後,我が国が難民の地位に関する条約(昭和56年条約第21号)及び難民の地位に関する議定書(昭和57年条約第1号)へ加入するに際し,昭和56年6月,出入国管理令の一部を改正する法律(昭和56年法律第85号)及び難民の地位に関する条約等への加入に伴う出入国管理令その他関係法律の整備に関する法律(昭和56年法律第86号)が公布(いずれも57年1月,上記条約及び議定書の発効と同時に施行。)された。これらにより,出入国管理令は,難民の認定に関する手続等について規定するとともに,名称も出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)と改められ,不法入国の罪に係る罰金額の引上げ等罰則規定に関する整備,及び難民認定に際しての不正手段の行使の罪等難民認定に係る罰則の新設が,いずれも行われた。
 次いで,昭和57年8月の外国人登録法の一部改正(同年10月施行)においては,外国人登録の確認申請期間が5年に伸長され,また,罰金の多額が引き上げられる一方,登録証明書不返納罪,変更登録申請の虚偽申請罪及び登録証明書不携帯罪について懲役刑・禁錮刑が廃止されるなど罰則規定の整備が行われた。
 その後,我が国の経済・社会の国際化が急速に進み,入国し在留する外国人数が増加するとともはその在留活動も多様化し,昭和26年に定められた在留資格の規定では適切に対処できない状況を招くに至った。また,国際交流が活発化する中で,不法に就労する外国人が急増し,入管法は,こうした状況へ新たな対応を迫られることとなった。そこで,平成元年12月,在留資格制度を整備し,入国審査手続の簡易化・迅速化と審査基準の透明性の改善を図るとともに,不法就労問題に対処するための関連規定を整備することなどを目的として,入管法が改正(2年6月施行)された。この改正においては,不法就労活動をさせる雇主やあっせん者を処罰する不法就労助長罪が新設されるなどした。
 平成4年6月には,外国人登録法の一部が改正(5年1月施行)され,居住地等の変更登録義務違反に係る罰則について懲役刑・禁錮刑が廃止されるとともに,特別永住者等に対して指紋押なつに代わる同一人性確認手段の一つとして署名制度が導入されたことに伴い,新たに不署名に係る罪の規定が設けられた。
 さらに,平成9年5月,集団密航者の増加に対応するため,入管法の一部が改正(同月施行)され,集団密航に係る罪等が新たに設けられた。