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 平成 9年版 犯罪白書 第1編/第2章/第1節/1 

第2章 刑罰法規の変遷

第1節 刑  法

1 終戦時の刑法

 刑法(明治40年法律第45号)は明治40年4月に公布(41年10月施行)され,第二次世界大戦の終結までの間に,2回にわたる一部改正がなされている。第一は,業務上横領罪の法定刑の下限を引き下げた大正10年4月の改正(同年5月施行)であり,第二は,強制執行不正免脱,競売入札妨害,談合,事前収賄,第三者供賄,柱法収賄,事後収賄,安寧秩序に対する罪等を新設した昭和16年3月の改正(同月施行)である。
 この間に,刑法を補充する刑罰法規として二つの主要な法律が制定されている。第一は,大正15年4月公布(同月施行)の暴力行為等処罰ニ関スル法律(大正15年法律第60号)であり,同法は,集団的暴行・脅迫・毀棄罪の規定を設けて刑法に定める暴行罪等の刑を加重した法定刑を定め,これを非親告罪(刑法の暴行罪及び器物毀棄罪は親告罪であった。)とし,また,集団的,常習的面会強請・強談威迫の罪を新設した。第二は,昭和5年5月公布(同年6月施行)の盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律(昭和5年法律第9号)であり,同法は,盗犯等に対する正当防衛等の特則を定め,常習累犯強窃盗罪等,刑法の強盗・窃盗の刑を加重する規定を新設した。
 戦時中の昭和16年12月には戦時犯罪処罰ノ特例ニ関スル法律(昭和16年法律第98号)が公布(同月施行)され,戦時に際し,灯火管制中又は敵襲の危険その他人心に動揺を生じさせるような状態にある場合の,強制猥襄,強姦,窃盗,強盗等の刑の加重規定が設けられた。同法は,17年2月に公布(同年3月施行)された戦時刑事特別法(昭和17年法律第64号)に引き継がれる形で廃止されたが,この戦時刑事特別法においては,上記戦時犯罪処罰ノ特例ニ関スル法律で定められていた加重規定に加えて,新たに放火等の加重規定が設けられ,さらに,戦時に際し,国政変乱を目的とする殺人,公共の防空建造物の損壊等の罪が新設されるなどした。