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 平成 8年版 犯罪白書 第3編/第9章/第3節/3 

3 科刑状況等

 ドイツでは,謀殺の法定刑は無期自由刑(1ebenslangeFreiheitsstrafe)のみである(ただし,限定責任能力などの減軽事由があるときは,3年以上の自由刑となる。)。故殺は5年以上の自由刑であるが,特に重い事態(in besondersschwerenFa11en)においては,謀殺と同じく無期自由刑と定められている。強盗については,単純強盗が1年以上の自由刑であるが,比較的重くない事態においては,6月以上5年以下となっている。重い強盗は5年以上の自由刑,強盗致死は無期自由刑又は10年以上の自由刑である。
 III-90表は,1993年の裁判所における終局処分の状況を見たものである。
 有罪と認定された者のうち自由刑を選択された者の比率は,全犯罪では20.2%であるが,謀殺,故殺及び強盗については100%であり,うも謀殺については50.7%が無期自由刑となっている。
 ドイツは,第二次大戦後,新しく制定した基本法(Grundgesetz)において,死刑制度を廃止した。その背景には,ナチス政権が,謀殺罪及び国家反逆罪についての唯一の法定刑であった死刑を濫用した歴史的事実があるとされている。この結果,謀殺罪は無期自由刑に処せられることとなったが,当初恩赦を受けない限りは釈放される可能性がなかったのが,1981年の刑法改正により,15年経過後は仮出獄(保護観察のための刑の残余期間の執行停止)の対象となることとなった。しかし,特別に重大な罪を犯した者については,この限りでない(法57a条1項2号)。