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 平成 8年版 犯罪白書 第3編/第4章/第1節/1 

第4章 凶悪犯罪と裁判

第1節 終局裁判

1 第一審

(1) 終局処理状況
 III-7図は,昭和27年以降の通常第一審における殺人・強盗(強盗致死傷及び強盗強姦を除く。以下,本章において同じ。)及び強盗致傷等(強盗致死傷及び強盗強姦をいう。以下,本章において同じ。)についての終局処理人員の推移を示したものである(巻末資料III-8III-10参照)。

III-7図 通常第一審における凶悪事犯終局処理人員の推移(昭和27年〜平成6年)

 通常第一審における殺人の終局処理人員を見ると,昭和34年の1,611人をピークとして以後減少傾向をたどり,平成4年には537人と底を記録したものの,その後はわずかながらも増加の傾向を見せ,6年は前年より7人(1.2%)増加して589人となっている。
 強盗については,昭和27年に1,806人を記録した後,多少の起伏を示しながらも減少傾向を示し続け,平成3年には過去最低の229人となったが,その後には増加傾向を見せ始め,6年は前年より48人(12.1%)増加して446人となっている。
 強盗致傷等については,昭和33年に1,082人のピークを記録した後,減少傾向をたどり,平成3年には過去最低の246人となったが,その後は漸増傾向を見せ始めた上,6年は前年より90人(30.2%)という顕著な増加を示して388人となっている。
 なお,司法統計年報によると,平成6年における地方裁判所による通常第一審の終局処理人員総数(4万9,422人)に占める凶悪犯罪に係る人員の比率は,殺人が1.2%,強盗が0.9%,強盗致傷等が0.8%となっており,これを合計すると総数の2.9%を占めている。
(2) 無罪判決の言渡し状況
 昭和27年以降の通常第一審における殺人・強盗及び強盗致傷等について,無罪人員数を概観すると,殺人についそは,最も人員数の多かった28年には30人で,これが同年の殺人終局処理人員中に占める比率は2.9%である。しかし,その後はおおむね1%前後で推移し,平成2年以降の5年間を見ても,2年は9人(殺人終局処理人員中に占める比率1.5%),3年は0人(同0%),4年は3人(同0.6%),5年は4人(同0.7%),6年は2人(同0.3%)である(巻末資料III-8参照)。
 強盗については,無罪人員数の最も多かった昭和27年には14人(強盗終局処理人員中に占める比率0.8%),その後も1%未満の比率で推移し,平成2年以降の5年間を見ても,2年は0人(同0%),3年から5年の間は各年1人(同0.3%から0.4%),6年は0人(0%)である(巻末資料III-9参照)。
 強盗致傷等については,昭和28年から35年の間に4年間,5人(強盗致傷等終局処理人員中に占める比率0.5%から0.7%)を記録したことがあったが,その後はいずれの年も4人以下(1%未満)で推移し,平成2年以降の5年間を見ても,2年から4年は0人(同0%),5年は1人(同0.3%),6年は1人(0.3%)である(巻末資料III-10参照)。
 III-16表は,平成2年以降の5年間の通常第一審における凶悪犯罪の無罪人員について,無罪理由別人員数を見たものである。5年間の無罪人員の累計571人中に殺人は18人(3.2%)であるが,心神喪失等の責任阻却を理由とする無罪人員総数26人中の9人(34.6%)が殺人によって占められている。

III-16表 通常第一番における罪名別・無罪理由別人員(平成2年〜6年)