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4 各種保護観察対象者の処遇 (1) 薬物関係保護観察対象者
II-32表は,平成7年における薬物事犯保護観察対象者の新規受理人員を見たものである。 II-32表 薬物事犯保護観察対象者新規受理人員(平成7年) 保護観察の類型別処遇では,薬物事犯に係る類型として,シンナー等濫用対象者及び覚せい剤事犯対象者が挙げられている。この類型に該当すると認定された保護観察対象者に対する処遇に当たっては,例示されている処遇指針等を参考として,当該対象者の特性等を個別に見極めた上で,処遇計画を策定し,その効果的な実施に努めるものとされている。シンナー等濫用対象者に対する処遇指針としては,[1]濫用の動機,薬物の種類,入手経路,依存性の程度,濫用状況等について調査し,問題性を見極めるようにする,[2]心理的葛藤を有する者などについては,カウンセリングその他の心理治療的な働き掛けを考慮する,[3]薬物依存が初期の段階にある者又は本人及び家庭に深刻な問題がない者に対しては,BBS会員によるともだち活動の活用を考慮するなど10項目が示されている。また,覚せい剤対象者に対する処遇指針には,[1]薬理作用及びその弊害についての本人の理解・認識を深めさせる,[2]暴力組織や不良グループとの交流状況の把握に努め,それらとの断絶を図る,[3]保護司による指導・助言・実態把握に加え,保護観察官の直接的関与により,再犯に至らないよう心理規制を強めるなど11項目が示されている。 薬物関係保護観察対象者に対しては,個別処遇のほか集団処遇も実施されている。集団処遇は,薬物に関する問題性を有する対象者又はその保護者から成る数人ないし十数人のグループに対して,薬物の持つ薬理作用及びその弊害について講義したり,薬物使用の経験やその弊害について集団で討議することにより,個人では考えつかないような問題解決の成果を上げ,また,薬物使用についての態度や行動の変化を図る目的で実施されているものである。平成7年においては,シンナー等濫用対象者及び覚せい剤事犯対象者に対する集団処遇が保護観察所25庁で実施され,また,これらの対象者の保護者に対するものは22庁で実施されている。 (2) 暴力組織関係保護観察対象者 II-33表は,平成7年における暴力組織関係保護観察対象者([1]現に暴力組織の幹部,組員又は準構成員である者,及び[2]過去に[1]に該当した者で,現在においても暴力組織から完全に絶縁しているとは認められない者をいう。)の新規受理人員を見たものである。 II-33表 暴力組織関係保護観察対象者新規受理人員(平成7年) 暴力組織関係対象者に対しては,[1]警察等関係機関の協力を得るなどして,生活状況,特に暴力組織との具体的な関係,同組織の動向等の実態把握に努める,[2]交遊関係の調整,転居等による環境の改善を図るなどして,本人に対し,組織からの離脱を働き掛ける,[3]組織加入の動機,その背景,組織における本人の地位,家庭環境,離脱の難易等を踏まえ,警察関係機関の協力を求めるなどして,本人を離脱させるよう組織に働き掛ける,[4]地道な職業への就労指導を行うなど,類型別処遇の処遇指針を参考として,処遇計画を策定し,社会復帰への働き掛けを行っている。なお,「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」の施行後に指定された暴力追放運動推進センターの暴力追放相談員として保護司が委嘱されている例が少なくない。また,保護観察所においては,暴力団から離脱する意思のある者に対し,矯正施設,警察及び暴力追放運動推進センター等と緊密に連絡を取り合い,暴力団情報の交換に努め,離脱の援助をするとともに,公共職業安定所の協力を得るなどして就労先の確保に努めている。 (3) 交通関係保護観察対象者 II-34表は,平成7年における交通関係保護観察対象者(罪名が業過又は道交違反であるもの。)の新規受理人員を見たものである。 II-34表 交通事犯保護観察対象者新規受理人員(平成7年) 保護観察の分野では,昭和30年代後半から,交通関係の犯罪や非行により保護観察を受ける対象者が増加するようになり,これに対処するため49年7月から交通事件により保護観察に付された者すべてに対して,一般事件による保護観察と区別した上,その特性に応じた効果的な処遇が実施されている。この交通保護観察においては,個別処遇手引書によるカリキュラム処遇のほか,視聴覚教材を活用した講義,座談会,グループワークなどの集団処遇も行われており,さらに,対象者を取り巻く生活・職場環境の改善を図り,家族や職場の人々の理解や協力を求め,被害者への慰謝・弁償に関して助言するといった取組も重視されている。 昭和52年4月から実施されている交通短期保護観察少年に対する処遇は,遵法精神のかん養,安全運転に関する知識の向上,安全運転態度の形成を目的として,全国一律に実施され,方法としては,2回ないし3回の集団処遇を実施するとともに,本人に対し毎月1回,自己の生活状況を書面で報告させ,車両による再犯・再非行がなければ,3か月以上4か月の期間以内に保護観察を解除することになっている。 集団処遇は,課目として講義,集団討議,ビデオ等視聴覚教育,運転適性検査及び感想文等の具体的カリキュラムを定め,実施している。集団討議では,具体的な違反・事故事例の研究のほか,安全運転の心構えや運転者の責任などのテーマが取り上げられ,運転適性検査では,自動車運転態度検査,法務省式人格目録,法規テストなどが行われている。また,処遇効果をより高めるために,免許保有者と無免許者,業過と道路交通法違反による者にグループ分けし,それぞれの問題態様に応じた集団処遇が実施されている。平成7年における集団処遇の実施状況は,実施回数4,642回,実施対象延べ人員5万8,247人となっている。 なお,集団処遇に際し,各検査の実施について少年鑑別所の協力を得ているほか,自動車教習所,警察,BBS等の協力を得ているところもある。 (4) 外国人保護観察対象者 平成7年の外国人保護観察対象者(韓国・朝鮮及び中国の国籍の永在者等を除く。)の新規受理人員は302人であり,前年の209人と比べ,44.5%増加している。これを保護観察の種類別に見ると,仮出獄者231人(76.5%)が最も多く,以下,保護観察処分少年47人(15.6%),保護観察付き執行猶予者17人(5.6%),少年院仮退院者7人(2.3%)の順である。これらを前年と比べると,仮出獄者が71人,保護観察処分少年が32人,それぞれ増加し,保護観察付き執行猶予者が9人,少年院仮退院者が1人,それぞれ減少している。 II-35表は,平成6・7年の各12月31日現在における,特別永住者を除く外国人保護観察対象者を出身地域別及び保護観察の種類別に見たものである。これは,一定時点における保護観察係属中の人員であるが,外国人保護観察対象者の総数は,7年が444人であり,前年の330人と比べ,34.5%増加している。中でも,アジア地域の出身者が最も多く,68.0%を占めている。 保護観察の対象となる外国人については,日本語による意思伝達の困難な者が多いこと,通訳人の確保が容易でないこと,本人が成育した社会の文化や制度の違いから生活習慣や罪悪感,規範意識が異なること,職場開拓が難しいこと,種々のハンディのための福祉・医療の援助が得にくいことなどの処遇上の問題点が挙げられる。これらの対応策としては,保護観察の手続等の各国語対訳付きガイドブックの作成,民間協力による通訳人の確保,保護観察官の語学研修等が実施されている。 II-35表 保護観察係属中の外国人の出身地域別人員(平成6年・ 7年各12月31日現在) |