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 平成 8年版 犯罪白書 第1編/第2章/第7節/2 

2 収賄事犯

 公務員犯罪の中でも,収賄事犯は,公務の公正に対する一般国民の信頼を損ない,遵法意識の低下を招くなど,その及ぼす影響は計り知れない。この種の事件は,収賄者及び贈賄者の双方が罰せられることから,当事者だけで隠密裏に行われることが多い上,特定の被害者が存在しないことなども加わって,極めて潜在性が強い。したがって,事件の傾向を単年度の統計で推し量ることは適当でないので,最近10年間に収賄罪で検挙された公務員(法令により公務に従事するとみなされる公務員を含む。)全員につき,これを昭和61年から平成2年までの5年間(以下,本節において「前期」という。)と,3年から7年までの5年間(以下,本節において「後期」という。)に分け,公務員の種類別に両者を比較して示したものが,I-61図である。
 検挙人員総数は,前期が649人,後期が285人減の364人となっており,いずれの公務員の種類においても検挙人員は減少傾向を示している。種類別に見ると,前期・後期を通じて,地方公務員が最も多く,以下,地方公共団体の各種議員,国家公務員の順となっている。

I-61図 収賄公務員の種類別検挙人員

 平成7年中に警察が検挙した事件の賄賂総額は2億47万円(前年より3億1,437万円・61.1%の減)であり,収賄者一人当たりの賄賂額は198万円(前年より273万円・58.0%の減)となっている(警察庁刑事局の資料による。)。
 I-19表は,平成2年から6年までの5年間における収賄事件の第一審裁判所の科刑状況を見たものである。6年中に懲役刑に処された者のうち,懲役1年以上の刑に処された者の比率は69.8%(44人)である。6年の執行猶予率は85.7%で,前年より4.0ポイント低くなっている。
 なお,平成6年に収賄で有期懲役刑の実刑を言い渡された人員は9人で,その内訳は,刑期が3年の者が1人,2年以上3年未満が2人,1年以上2年未満が4人,6月以上1年未満が2人となっている(司法統計年報による。)。

I-19表 収賄事件の第一審科刑状況