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 平成 8年版 犯罪白書 第1編/第2章/第2節/2 

2 覚せい剤事犯

 I-31図は,覚せい剤事犯の検挙人員の推移を見たものである。覚せい剤事犯は,昭和40年代後半から50年代後半にかけて急増し,昭和60年以降減少に転じたものの,依然として高い水準で推移しており,平成7年における検挙人員は,1万7,364人で,前年と比べ2,468人(16.6%)の大幅な増加となった。

I-31図 覚せい剤事犯検挙人員の推移

 平成7年に覚せい剤の使用に起因する犯罪により検挙された者は,151人で,前年と比べ8人増加し,内容的には窃盗のほか,銃刀法違反,暴行,傷害等が多くなっている。また,同年に覚せい剤の使用に起因する事故を起こした者は,濫用死22人,交通事故20人,自殺9人等合計59人で,薬物濫用による死亡,交通事故等が多発している(警察庁生活安全局の資料による。)。
 平成7年における覚せい剤事犯検挙人員に占める暴力団勢力(暴力団の構成員及び準構成員)の比率は,43.1%であり,前年と比大0.1ポイント低下したものの,依然として高い水準にある。厚生省薬務局の資料により,平成7年における覚せい剤事犯検挙人員を年齢層別に見ると,I-32図のとおり,20歳代の者が41.5%で最も多く,以下,30歳代の26.0%,40歳代の17.3%,50歳以上の8.9%,19歳以下の6.2%となっている。30歳未満の若い年齢層は8,296人で,前年と比べ1,534人(22.7%)増加している。
 国内で濫用されている覚せい剤は,そのほとんどが海外から輸入されたものであるが,平成7年における覚せい剤1kg以上の大量押収事犯は,13件(押収量合計48.9kg,総押収量の57.5%に相当。)である。これを供給地別に見ると,中国1件(13.1kg),供給地不明12件(35.8kg)となっている(警察庁生活安全局の資料による。)。覚せい剤1kg以上の大量押収事犯は,その供給地が不明なものが多く,年次による変化も大きいので,最近5年間の累計により供給地別押収量の構成比を見ると,I-33図のとおり,台湾の30.3%,中国の29.2%などとなっている。

I-32図 覚せい剤事犯検挙人員の年齢層別構成比

I-33図 覚せい剤密輸入の供給地別押収量構成比

 平成7年における来日外国人による覚せい剤事犯検挙人員は485人で,前年と比べ147人(43.5%)の増加となっている。これを国籍別に見ると,フィリピンが285人で最も多く,総数の58.8%を占め,次いでイランが120人で,それぞれ前年に比べ110人(62.9%),35人(41.2%)の増加となっている(警察庁生活安全局の資料による。)。
 I-34図は,昭和45年から平成7年までの間における少年による覚せい剤事犯検挙人員の推移を見たものである。少年による覚せい剤事犯は,昭和57年をピークとして減少傾向を示し,その後は多少の増減を繰り返していたが,平成7年は1,083人で前年と比べ251人(30.2%)の大幅な増加となった。

I-34図 覚せい剤事犯の少年検挙人員及び少年比の推移