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 平成 8年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/2 

2 主要特別法犯の動向

 本項においては,特別法犯のうち,本編第2章第2節において記述される薬物関係特別法犯を除く主要特別法犯について,その動向を見ることとする(巻末資料I-7参照)。
(1) 交通関係
 平成7年における道交違反取締件数は843万370件で,そのうち,反則事件として告知されたものは741万3,217件(87.9%)となっている。
 告知件数を違反態様で見ると,駐停車違反が最も多く253万5,826件で,総数の34.2%を占め,次いで,速度超過が190万9,657件(25.8%)となっている。送致件数を違反態様で見ると,速度超過が38万3,595件で最も多く,総数の37.7%を占め,次いで,酒気帯びが32万5,992件(32.0%)となっている(巻末資料I-8参照)。
 I-11図は,最近20年間の検察庁における道交違反等の新規受理人員の推移であるが,平成7年の新規受理人員は,前年と比べて,道路交通法違反,保管場所法違反共に減少して,合計で99万6,698人(うち,道路交通法違反は94万9,509人)となっており,検察庁新規受理人員総数に占める比率は49.6%である。

I-11図 道交違反等の検察庁新規受理人員の推移

 少年の交通非行については,平成7年における少年の道路交通法違反取締件数は79万8,445件で,,このうち,68万9,305件(86.3%)が反則事件として処理されている。7年の少年の非反則事件について,態様別構成比を見ると,無免許が46.3%で最も高く,次いで,速度超過(25.9%),酒気帯び(8.9%)の順となっており,危険性の高い行為が多い(警察庁の統計による。)。
(2) 保安関係
 I-12図は,最近10年間における保安関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。

I-12図 保安関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移

 保安関係事犯は,平成元年までいずれも減少傾向にあったが,軽犯罪法違反は,3年以降毎年増加している。また,7年は前年と比べ,銃刀法違反が364人(9.7%),軽犯罪法違反が1,351人(33.3%),それぞれ増加し,火薬類取締法違反が85人(34.3%),酩酊防止法違反が19人(4.8%),それぞれ減少した。
 警察庁の統計によって,平成7年の保安関係特別法犯につき,違反態様別に送致人員の多いものから順に見ると,軽犯罪法違反では,はり札・標示物除去,凶器携帯,窃視,田畑等侵人,侵入具携帯の順となっている。また,銃刀法違反では,刃物の携帯,けん銃等の不法所持,けん銃等の加重不法所持,けん銃等・猟銃以外の銃砲・刀剣類の不法所持,模造刀剣類の携帯の順となっており,火薬類取締法違反では,所持,譲渡し・譲受けの順となっている。
(3) 外事関係
 I-13図は,最近10年間における外登法違反及び入管法違反の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。

I-13図 外事関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移

 外国人の不法入国者及び不法残留者の急増に伴い,入管法違反が急激に増加してきた反面,外登法違反は著しく減少してきた。
 なお,平成7年は前年と比べ,入管法違反が820人(10.7%),外登法違反が140人(39.8%),それぞれ減少した。
 警察庁の統計によって,7年の外事関係特別法犯につき,違反態様別に送致人員の多いものから順に見ると,入管法違反では,不法残留,旅券不携帯等,不法就労助長,不法入国,資格外活動,不法上陸の順となっている。外登法違反では,新規登録不申請が約半数を占めている。
(4) 風俗関係
 I-14図は,最近10年間における風俗関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。平成7年は前年と比べ,児童福祉法違反が29人(6.5%)増加した以外は,売春防止法違反が610人(34.2%),風営適正化法違反が280人(12.3%),公営競技取締法規違反(競馬法違反,自転車競技法違反及びモーターボート競走法違反をいう。)が1,054人(37.3%),それぞれ減少となっているが,中でも,競馬法違反は811人(39.1%)減少している。

I-14図 風俗関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移

 警察庁の統計によって,平成7年の風俗関係特別法犯につき,違反態様別に送致人員の多いものから順に見ると,売春防止法違反では,周旋等,勧誘等,売春をさせる契約,場所の提供の順,児童福祉法違反では,児童に淫行をさせる行為,刑罰法令に触れる行為をなすおそれのある者に児童を引き渡す行為,児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって児童を支配下に置く行為の順となっている。
(5) 環境関係
 I-15図は,最近10年間における環境関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。平成7年は前年と比べ,廃棄物処理法違反が209人(8.9%),海洋汚染防止法違反が218人(26.1%),水質汚濁防止法違反が4人(6.3%),自然公園法違反が3人(18.8%),それぞれ減少した。
 警察庁の統計によって,平成7年の環境関係特別法犯について公害の態様別に見ると,廃棄物が送致件数のほとんどを占めている。

I-15図 環境関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移

(6) 労働関係
 I-16図は,最近10年間における労働関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。平成7年は前年と比べ,労働安全衛生法違反が27人(1.5%),労働基準法違反が5人(0.6%),それぞれ増加した一方,職業安定法違反が62人(23.0%),船員法違反が32人(20.9%),労働者派遣法違反が24人(19.2%),それぞれ減少した。

I-16図 労働関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移

(7) 選挙関係
 I-17図は,最近10年間における公職選挙法違反の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。選挙関係事犯は,各年における選挙の有無・種類等によって受理人員に大きな変動があり,昭和61,62,平成2,3,5,7の各年の受理人員が多くなっている。受理人員の多い年を見ると,昭和61年7月にいわゆる衆参同時選挙が,62年4月及び平成3年4月に統一地方選挙が,2年2月及び5年7月に衆議院議員総選挙がそれぞれ行われており,これらの選挙との関連が深いことが分かる。
 平成7年は,4月に統一地方選挙,7月に参議院議員通常選挙が行われたが,各選挙施行後約6か月間の検察庁受理人員は,統一地方選挙では8,852人(対前回同種選挙比5,098人減),参議院議員通常選挙では527人(同708人減)となっている。
 警察庁の統計によって,平成7年の公職選挙法違反につき,違反態様別に送致人員心多いものから順に見ると,買収・利害誘導が圧倒的に多く,次いで,文書図画に関する制限違反,詐偽登録・詐偽投票等の不正投票,寄附に関する制限違反の順となっている。

I-17図 公職選挙法違反の検察庁新規受理人員の推移

(8) 財政経済関係
 I-18図は,最近10年間の全国検察庁における所得税法違反,相続税法違反及び法人税法違反の新規受理人員の推移を見たものである。
 I-19図は,1件当たりの脱税額について,最近10年間の各会計年度に国税庁から検察庁に告発された所得税法・相続税法違反及び法人税法違反事件のそれぞれの推移を見たものである。

I-18図 所得税法違反・相続税法違反・法人税法違反の検察庁新規受理人員の推移

I-19図 所得税法・相続税法違反及び法人税法違反事件の1件当たりの平均脱税額の推移

 告発件数は,平成7年度(会計年度)においては合計163件(前年比5.2%増)で,その内訳は,所得税法違反が53件,相続税法違反が8件,法人税法違反が102件となっている。その総額は,脱漏所得額については約605億円(同12.6%減),脱税額(加算税額を含む。以下同じ。)については約331億円(同12.4%減)で,1件当たりの平均脱漏所得額は約3億7,100万円(同17.0%減)となっている。1件当たりの平均脱税額は約2億306万円(前年比16.8%減)で,所得税法・相続税法違反では約2億4,600万円(同28.9%減),法人税法違反では約1億7,800万円(同1.7%減)となっている。また,脱漏所得額が5億円以上の事件が35件,脱税額が5億円以上の事件が11件となっている。
 告発件数を業種別に見ると,建設業(24件),製造業(21件),小売業(19件),卸売業,不動産譲渡(各14件)の順となっている。脱税の手段・方法については,売上げ除外や架空原価の計上等のほか,特異な例として,多数の納税者に脱税を持ちかけて架空の債務・譲渡費用等を計上させて所得税等を免れさせ,かつ自己が得た脱税請負報酬のすべてを除外して所得税を免れたものがある(国税庁の資料による。)。
 I-20図は,最近10年間における証券取引法違反及び独占禁止法違反の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。独占禁止法違反が,公正取引委員会の告発に係る27人を含め291人であり,急激な増加を示している。
 I-21図は,最近10年間における無体財産関係法令違反中,特許法,商標法及び著作権法違反の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。

I-20図 証券取引法違反・独占禁止法違反の検察庁新規受理人員の推移

I-21図 特許法違反・商標法違反・著作権法違反の検察庁新規受理人員の推移

 なお,平成7年は,実用新案法違反はなく,意匠法違反は7人であった。
(9) 条例違反
 I-22図は,最近10年間における条例違反の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。平成7年における条例違反の検察庁新規受理人員総数は,4,289人(前年比537人,14.3%増)である。前年と比べると,青少年保護育成条例違反は105人(5.3%)増加し,公安条例違反は6人(33.3%)減少し,その他の条例違反は438人(25.0%)増加した。

I-22図 条例違反の検察庁新規受理人員の推移