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 平成 7年版 犯罪白書 第4編/第8章/第2節 

第2節 保護観察対象者の処遇

 保護観察の類型別処遇(第2編第3章第3節参照)においては,薬物事犯に係る類型として,シンナー等濫用対象者及び覚せい剤事犯対象者が挙げられている。平成6年12月31日現在において,保護観察処分少年のうち20.6%,少年院仮退院者のうち38.6%の者がシンナー等濫用対象者に該当し,また,仮出獄者のうち22.9%,保護観察付き執行猶予者のうち21.3%の者が覚せい剤事犯対象者に該当している。
 シンナー等濫用対象者とは,以下の認定項目の一又は二以上に該当する保護観察対象者を指す。
 [1] 本件処分の罪名又は非行名に,シンナー等の濫用による毒劇法違反が含まれる者
 [2] 本件処分の罪名又は非行名のいかんにかかわらず,シンナー等の濫用が本件処分の対象となった事案の動機,原因に関連していると認められる者
 [3] [1]及び[2]以外の者で,本件処分後において,シンナー等の濫用が認められるもの
 [4] [1],[2]及び[3]以外の者で,シンナー等の濫用の結果による後遺症が危ぐされるもの
 類型に該当すると認定された保護観察対象者に対する処遇に当たっては,各類型ごとに示されている処遇指針等を参考にして当該対象者の特性等を個別に見極めた上で,処遇計画を策定し,その効果的な実施に努めるものとされているが,シンナー等濫用対象者に対する処遇指針は,次のとおりである。
 [1] 濫用の動機,薬物の種類,入手経路,依存性の程度,濫用の状況等について調査し,問題性を見極めるよう努める。
 [2] 薬理作用及びその弊害についての本人の理解・認識を深めさせる。
 [3] 規則正しい生活のリズムを体得させるなど,基本的な生活習慣を身に付けさせる。
 [4] 心理的かっ藤を有する者などについては,カウンセリングその他の心理治療的な働き掛けを考慮する。
 [5] 薬物依存が初期の段階にある者並びに本人及び家庭に深刻な問題がない者に対しては,BBS会員によるともだち活動の活用を考慮する。
 [6] 保護者等に対して,薬理作用及びその弊害に関する知識を深めさせるなどして,保護能力の向上に努める。
 [7] 集団処遇等によって,上記[2]から[6]までの効率化を図るほか,同処遇の直接的効果として,本人の態度変容等が期待できる煮については,その実施を考慮する。
 [8] 精神的・身体的異常が認められる者については,精神科医等の専門家の協力を求める。
 [9] 保健所,警察署等に講演を依頼するなど社会資源の活用を図る。
 [10] 必要に応じて精神保健法に基づく通報を考慮する。
 次に,覚せい剤事犯対象者とは,以下の認定項目の一又は二以上に該当する保護観察対象者を指す。
 [1] 本件処分の罪名又は非行名に覚せい剤取締法違反が含まれている者
 [2] 本件処分の罪名又は非行名のいかんにかかわらず,覚せい剤の違法な使用,所持,譲渡しなどが本件処分の対象事犯の原因・動機に関連していると認められる者
 [3] [1]及び[2]以外の者で,覚せい剤使用の結果による後遺症が危ぐされるもの
 覚せい剤事犯対象者に対する処遇指針は,次のとおりである。
 [1] 使用の動機,入手経路,依存性の程度,使用の状況等について調査し,問題性を見極めるよう努める。
 [2] 薬理作用及びその弊害についての本人の理解・認識を深めさせる。
 [3] 暴力組織や不良交遊グループとの交流状況の把握に努め,それらとの断絶を図る。
 [4] 堅実な職業意識を持たせ,就労の安定を図るなどして,享楽的な生活態度を改めさせる。
 [5] 保護司による指導・助言・実態把握に加え,保護観察官の直接的関与により,再犯に至らないような心理規制を強める。
 [6] 規則正しい生活のリズムを体得させるなど,基本的生活習慣を身に付けさせる。
 [7] 同居家族等に対して,薬理作用及びその弊害に関する知識を深めさせるなどして,その監護能力の向上に努める。
 [8] 集団処遇等によって,上記[2]から[7]までの措置等の効率的実施を図るほか,同処遇の直接的効果として,本人の態度変容等が期待できる者については,その実施を考慮する。
 [9] 精神的・身体的異常が認められる者については,精神科医等専門家の協力を求める。
 [10] 保健所,警察署等に講演を依頼するなど社会資源の活用を図る。
 [11] 必要に応じて精神保健法に基づく通報を考慮する。
 上記の処遇指針にもあるとおり,薬物事犯の保護観察対象者には,各別遇のほか,集団処遇の実施も検討することとされてがるが,シンナー等濫用対象者に対するものが,平成6年においでは,29庁で実施され(総実施回数57回・参加人員725名),また,シンナー等濫用対象者の保護者に対するものが,2庁で実施されている(総実施回数3回・参加人員34名)。一方,覚せい剤事犯対象者に対するものは,1庁で実施され(総実施回数5回・参加人員8名),覚せい剤事犯対象者の引受人に対するものが,11庁で実施されている(総実施回数23回・参加人員191名)。
 なお,個別的更生保護の諸措置のほか,各保護観察所においては,更生保護の立場から行う犯罪予防活動の企画・実践という観点から,保護司,更生保護婦人会,BBS会員等による薬物濫用防止のための地域啓発活動の実施,地方自治体,薬物濫用対策推進組織等による覚せい剤追放等の活動への積極的参加,協力等の諸活動に取り組んでいる。