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2 検察庁における処理状況 税関職員からの告発を含め,検察庁が受理し,認知した関税法違反及び外為法違反事件の処理状況を見ると,IV-36表のとおりである。平成5年における起訴率は,関税法違反が87.0%,外為法違反が47.4%であった。
検察庁において処理された事例を通して,最近におけるこれら事犯の特徴を概観してみる。 関税法違反,外為法違反のみに係る事例としては,正規の輸入承認を受けずに脱脂粉乳,さけ,ます,鯨肉等を密輸入した事犯,牛・豚肉,雑貨等について虚偽の輸入申告をした関税は脱事犯,外国の土地を購入しようとする暴力団組長が,無許可送金した事犯,生糸の輸入に際し,輸入の承認が不要な品目である旨偽って不正輸入した事犯,許可を受けずに船舶を輸出した事犯,繊維製品等を輸出する際に,輸出の承認を要しない国を仕向地と偽り,要承認国に輸出した事犯,円表示自己あて小切手を隠匿携帯して出国し,無許可で支払手段を輸出した事犯等がある。また,ココム規制品である金属工作機械及び部品,電子部品,計測機器,工業薬品等を輸出した企業ぐるみの犯罪も見られる。 IV-36表 密貿易事犯の起訴・不起訴人員 一方,麻薬等薬物,けん銃を含む銃砲等の密輸入に係る事例を見ると,その手口はますます巧妙・悪質化している。薬物については,下着の下に隠す,衣類等に縫い込んだり,染み込ませる,靴底に入れる,体内に飲み込むなどの方法で,隠匿所持して持ち込む事例のほか,貨物用の木製パレット内,ボウリングのボール内,木製飾額内等に,大量の大麻,コカイン,ヘロイン等を隠匿して密輸入を図る事例が見られる。また,海外の商品先物取引への投資に関連する知能犯罪も多発している。ガスオイル,コーヒー,ココア,砂糖,大豆,金地金等の先物取引において,実際には海外の商品取引所等への取次をしなかったり,直ちに反対売買するなどして顧客に売買差損を生じさせ,委託補償金等の名目で金をだまし取るなど,相手がこの種海外取引に関する知識の乏しいことに付け込む詐欺事件が少なくない。また,国内での大規模な詐欺により得た金を海外に送金していた事例も見られる。 このほか,ワシントン条約により取引が禁止されている,生きた動物,べっこう,毛皮や皮製品,肉類,象牙製品等の密輸入,有名ブランド商品の偽物やコンピュータ・プログラムの不正な複製品等の密輸入なども見られる。 以上のように,犯罪の国際化という観点から最近の事件を見ると,犯罪が複数の国・地域にまたがっていること,組織的に行われていること,巧妙な手段を用いていること,不正に得た金を外国に持ち出したり,犯人が国外に逃亡し潜伏するなどといった例が見られることなどの特徴が指摘でき,事件の解明や犯罪者の逮捕等にも国際的協力体制の整備の必要性が一層増す傾向にあると認められる。 |